- 2018.01.15
- インタビュー・対談
ふたり芝居『家族熱』、連続ドラマ「春が来た」制作者が語り合った向田作品の魅力と可能性【後編】
合津直枝(テレビマンユニオン) 松永 綾(WOWOW)
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#エンタメ・ミステリ
5月29日に公演がスタートする「ふたり芝居『家族熱』」、1月13日から放映される連続ドラマ「春が来た」。その制作に携わった合津直枝さん(テレビマンユニオン)と松永 綾さん(WOWOW)に、向田作品の魅力と可能性について語っていただきました。
「春が来た」のアレンジは
松永 向田さんのドラマによく出てくるのは、やはり昭和の典型的な日本人のお父さんですよね。今は女性も働くし、昔のように家族全員を統制できるような権威ある父親像というのは、なかなか描きにくくなっているけれど、向田さんの作品の中には、その父親のちょっとした弱みとか、情けないところが描かれていますよね。すごくシャイなところもあったりして、そういうところに惹かれるんですね。今、制作しているドラマ「春が来た」では、父親の人間臭さを前面に出して、向田作品らしさを踏襲できたらと思っているんです。
合津 確かに「春が来た」の親父は情けない(笑)。向田さんはお父さまがご健在の時には、「はいはい」って従っていたけれど、長じるにつれて、昭和の男は本当は弱いから、あんな風に虚勢をはるんだと、包み込むような、愛おしいような気持ちでいたんじゃないかと思います。作品でも、夫に愛人がいることを知っていながら、それを知らないふりをする妻に比べ、不倫している男の方が弱いですよ。
松永 その辺りの情けなさが、今の時代に読んでも、自然にフィットするところなんです。でも、そんな父親がいざというときに、弱い部分をさらけ出して必死に家族をつなごうとする強さも描いています。
合津 私にとって「春が来た」の印象は、父親が三國連太郎さんで母親が加藤治子さん、娘が桃井かおりさん、その相手役が松田優作さんだったドラマの印象が強いんだけど、原作は『隣りの女』に入っている短篇ですよね。
松永 合津さんが向田邦子さんの猫の番組を撮られた後、向田さんの没後三十年のタイミングということもあって、『向田邦子イノセント』というオムニバスドラマを作らせていただいたんです。「隣りの女」 「きんぎょの夢」「三角波」「愛という字」の四作品をドラマ化しました。その際に『隣りの女』の文庫本の最後に収められている、短篇「春が来た」を読んでビビッときたんです。家族がひとりの来訪者によって変わっていくというのが、すごく魅力的なテーマでずっと頭にありました。
合津 いい作品ですよね。ちょっとした見栄をお互いに張り合ったり、色んなことが連鎖して起きていく。家族ってきれいごとだけでは済まされない、陰りや闇や嘘があった上で、家族ならそれを全部許せるかという……。絵空事にならない、様々な人間のナマの感情をみせてくれるのが、向田さんの世界ですから。
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