2018.01.15 インタビュー・対談

ふたり芝居『家族熱』、連続ドラマ「春が来た」制作者が語り合った向田作品の魅力と可能性【前編】

合津直枝(テレビマンユニオン) 松永 綾(WOWOW)

ふたり芝居『家族熱』、連続ドラマ「春が来た」制作者が語り合った向田作品の魅力と可能性【前編】

「連続ドラマW 春が来た」は1月13日(土)よる10時スタート(全5話)©2017 WOWOW

5月29日に公演がスタートする「ふたり芝居『家族熱』」、1月13日から放映される連続ドラマ「春が来た」。その制作に携わった合津直枝さん(テレビマンユニオン)と松永 綾さん(WOWOW)に、向田作品の魅力と可能性について語っていただきました。

合津直枝(ごうづ・なおえ) 早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にテレビドラマをプロデュース。映画『幻の光』を企画制作、『落下する夕方』で監督デビュー。ふたり芝居『乳房』『檀』『悪人』『家族熱』では企画・台本・演出。

合津 実は私、向田邦子さんとほんの一瞬、直接お話ししたことがあるんです。

松永 そんな機会が!

合津 向田さんが直木賞をお取りになったのは一九八〇年、この年に「とらばーゆ」という女性の就職・転職雑誌が創刊されたんですが、翌年創刊一周年記念号を出すということで、知り合いの編集者が、前年直木賞を受賞された向田さんから、働く女性に応援コメントをもらえないか――もしそのアポイントがとれたら、私にインタビューさせてくれるというので、お願いの電話を差し上げたんです。

 同じ業界にいてももちろん面識はなく、企画の趣旨を一生懸命ご説明したんですが、向田さんは「あ、わたくし、そういうことはやっておりませんの。ごめんください」と、電話を切られて。たったそれだけで終わってしまったんですけれど、“ナマ向田”の印象は、やっぱり強烈でしたね。徹底した男性社会の中で、映画雑誌の記者をされ、ラジオで森繁(久彌)さんの脚本を書かれたことからテレビでもご活躍され、初めての短篇小説が単行本になる前に直木賞を取られてと、ものすごい気迫と勢いで駆け抜けていく感じ。短い電話でも、とにかくその疾走感が強く印象に残っているんです。

松永 向田さんの亡くなられたのは、八一年の夏ですから、それからたった数か月後ですよね。私はまだ三歳でしたから、何も当時の記憶はないんですけれど……。

合津 じゃあ、久世(光彦)さんの手がけたお正月のテレビドラマは?

松永 それも何となく、母親が見ていた、くらいでしょうか。

合津 むちゃくちゃ若い(笑)。

松永 いやそれほどでも(笑)。昭和の最後の方の生まれですから、電話は黒電話のダイヤル式ではないまでも、固定式で受話器をガチャッと切るタイプでした。向田さんの描かれている昭和の香りというのは、自然とわかりますね。

合津 私は向田さんの亡くなられた年、父ががんを患って地元の病院に入院していて、泊まり込みで看病をしていたんです。NHKの七時のニュースで向田さんの飛行機事故を知った父が、「お前も(東京に)行かなくていいのか?」と言うので、同じテレビ業界にいても、とても一緒に仕事ができるようなレベルの方じゃないことを説明したのを覚えています。その一か月後に父は亡くなり、一九八一年という年は、向田さんとの数秒の出会いがあり、父との別れの時期に向田さんも逝かれてしまったという、特別な思いが重なる年でした。

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