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東映の歴史とは、すなわち、成功と蹉跌とが糾う、生き残りの歴史である。――水道橋博士(第1回)

東映の歴史とは、すなわち、成功と蹉跌とが糾う、生き残りの歴史である。――水道橋博士(第1回)

文:水道橋博士 (漫才師)

『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』 (春日太一 著)


ジャンル : #ノンフィクション

『天才 勝新太郎』 (春日太一 著)

 そもそもボクが、春日太一氏を初めて知ったのは2010年、1月――。

 氏の2冊目となる著書、文春新書『天才 勝新太郎』からだった。

 

 平凡なタイトル、聞いたことのない著者名。

 毎月、過剰に出版される新書群のなかで普通ならスルーするであろうに、何故、この本を手にとったのか?

 それはボクが、以前から勝新には少なからず興味があり、数多の自伝、評伝を読んできた自負はあるからだ。

 特に、山城新伍著『若山富三郎 勝新太郎 無頼控 おこりんぼ さびしんぼ』(幻冬舎 1998年。その後、2008年に廣済堂出版より解説・吉田豪で文庫化)の大ファンで、当時の書評に、このように記した。

 

「勝新太郎は『勝新大陸』、『勝新山脈』と呼ぶべき、常人の住む娑婆とは隔離された、芸能の真理を身に纏う偉大なる無法者であり続けた。この一般には見えざる概念上の、大陸、山脈は、川勝正幸さんや特殊漫画家・根本敬らの研究、紹介により、昨今、その存在が多くの人に知られるようになった。しかし、この偉大なる『芸能山脈』である勝新太郎が兄・若山富三郎、父・杵屋勝東治から連なる巨大な連峰であったことは、この芸能一家と密に付き合った、山城新伍というアルピニスト、及び、語り部がいて、あらためて気づかされるのである。この本は、役者・勝新太郎の世評の「破天荒」では収まりきれない、芸の凄みを同じ役者側から伝えた第一級の資料であった」と。

 

 そんなボクも含む90年代の勝新再評価の一方で、山城新伍や同時代人が次々と亡くなり、巷間語られる勝新伝説は、大酒豪ぶり、借金王などの豪放磊落伝、「もうパンツははかない」のコカイン事件の顛末など、私生活の破天荒さばかりで、本来、撮影所に聳えていたはずの勝新山脈は蜃気楼のように曖昧になっていた。

第2回に続く

春日太一(かすがたいち)

春日太一

1977年東京生まれ。時代劇・映画史研究家。日本大学大学院博士後期課程修了。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』(文春文庫)『時代劇は死なず!』(河出文庫)『仁義なき日本沈没』『市川崑と「犬神家の一族」』(以上、新潮新書)など。


水道橋博士(すいどうばしはかせ)

水道橋博士

1962年8月18日生。岡山県倉敷市出身。漫才師。コンビ名・浅草キッド。受賞歴:第4回 みうらじゅん賞。出演番組:『バラいろダンディ』(TOKYO MX)、『総合診療医ドクターG』(NHK)他。著書:『お笑い 男の星座』、『キッドのもと』。水道橋博士名義では『本業』、『博士の異常な健康』など多数あり。最新刊は『藝人春秋』。有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』を月3回配信中。特技:宅地建物取引、漢字検定(2級)他。

あかんやつら 東映京都撮影所血風録
春日太一・著

定価:本体1,020円+税 発売日:2016年06月10日

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鬼才 五社英雄の生涯
春日太一・著

定価:本体920円+税 発売日:2016年08月19日

詳しい内容はこちら

天才 勝新太郎
春日太一・著

定価:本体940円+税 発売日:2010年01月20日

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