- 2014.12.07
- 書評
変化こそが交渉の本質だ!
ハーバード人気「交渉術」講義を完全書籍化
文:土方 奈美 (翻訳家)
『交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義』 (マイケル・ウィーラー 著/土方奈美 訳)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
ジャズや戦争のプロから、交渉の「全て」を学ぶ
「合意が成立する可能性のある範囲(合意の三角形)を描いてみる」「最高のシナリオと最悪のシナリオを両方考えておく」といった入念な準備作業、ジャズや戦争のプロに学ぶ状況への臨機応変な対応術、さらなるレベルアップのために交渉が終わったあとに行うべき振り返り作業まで、本書には有能な交渉人になるための「全て」が詰まっている。紹介される豊富な事例はウィーラー教授が実際に講義で使っていたもので、交渉人としての引き出しを増やすのに役立ちそうだ。
体系的メソッドに加えて、交渉力アップにすぐに役立つ“小技”もたくさん紹介されている。たとえば少し体勢を意識して「オープンスタンス」を心がければ、相手に友好的な印象を与えられるうえに、自分の中から前向きな感情を引き出すこともできる。「(状況を)学び、(自分が)変わり、(相手を)変える」交渉術は一朝一夕に習得できるものではないが、できるところから始めれば交渉の成果は着実に高まるだろう。
世界のトップビジネススクールの特別講義と言うだけあって、本書の内容は奥が深い。巻末の「交渉でカオスを受け入れるべき25の理由 戦略の手引き」には内容が簡潔にまとめられているので、最初に読んで“講義”の概要をつかんでおくのもいいだろう。
翻訳作業を始めて数カ月、訳者の交渉能力にも着実な改善が見られた(と自分では思っている)。これまでなら遠慮していたような要求を口にしてみたら、意外にあっさりと相手に受け入れられて気分すっきり、といったことも一度や二度ではない。ウィーラー教授も言うとおり「交渉はキャリアおよび私生活において繰り返し起こる重要なプロセスであり、その能力をわずかに向上させるだけでも満足度や幸福度はぐっと高まる」。ぜひ本書を手に取り、皆様の日々の満足度や幸福度を高めていただきたい。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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