もっとも、何もしないで、生き生きとした働き方ができるほど、現実が甘くないことも事実でしょう。本書では、最終章で、オリジナル人生を設計するために役立つ、実践的・具体的な三つのステップが紹介されています。自分でキャリアを設計せよと言われても、どうしていいか分からない人にとっても、大変、親切な内容になっていると思うので、時間がない人は、この最終章だけでも読むことをお勧めします。
私個人としては、第二、第三の人生をより生き生きとしたベターなものにしたいなら、やはりある程度の能力開発は、いくつになっても必要ではないかと考えています。変化の速い世の中では、残念ながら、個人がもっているスキルが陳腐化しやすいのも事実です。専門学校で実践的な知識や新たな知識を身につけたりして、常にスキルをアップデートしておくことは、今後ますます重要になってくるでしょう。
社会の政策や制度といった側面を考えると、まだまだこのようなスキルアップが容易にできるような教育機関が少ないように感じます。大学といえば、若者が行くところと考えられていて、たとえば中高年の大学生や大学院生は、どこのキャンパスでもかなりの少数派でしょう。でも、世界的にみれば、中高年になって大学で学んでいる人はたくさんいるのです。
もちろん、日本でも社会人大学や生涯学習等の取組みがずいぶん進められていて、社会人が学ぶ機会は増えてきています。けれども、第2の人生のために新しい技能を身につけたり、スキルアップ実現のための知識を吸収したりできる教育プログラムはまだまだ不足しているように思うのです。大学でなくても専門学校でもどんな名前の教育機関でも良いのですが、中高年がきちんとスキルアップできるような場所がもっとあるべきですし、そのための政策を考える必要もあると考えています。
最近は、インターネットを通じたオンライン教育も盛んになりつつあります。これは時間のない社会人にとっては、大きな武器になる可能性をもっています。この面でも、技術の変化は世の中を大きく変えるかもしれません。
とはいえ、あまり難しく考える必要もないのです。転職に成功した人たちの事例をみていても、まったく新しいスキルを身につける必要があったというよりも、自分の能力を今いる会社だけでなく、新しい場所で生かせるように再整理するだけで、それがスキルアップになり、大きな武器になったケースは多いです。
結局のところ、大事なのは、企業に与えられるままに働き方、生き方を選ぶのではなく、自分で主体的にキャリアを設計し、スキルを獲得していくことでしょう。そして、それこそが本書の大きな主題であり、そのための実践的なステップがふんだんに書かれているのです。
本書を読んで実際に、40代で新しい働き方・生き方に移行する人が増えてくれば、日本経済もきっと大きく変化すると思うのです。40代以降の人たちがもっと生き生きと働くことができれば、経済全体の生産性もあがり、今よりもさらに経済が活性化することでしょう。
本書の内容を実践することで、いやいや働かされるのではなく、自分がやりたいと思うことができる人が沢山現れてほしいと思っています。そうすれば、より明るい働き方ができる人が世の中に増えてくることでしょう。そう、ちきりんさんのように。
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