- 2015.06.13
- インタビュー・対談
人生は“きれいごと”では生きられない
「オール讀物」編集部
『中島ハルコの恋愛相談室』 (林真理子 著)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
――あのエッセイは、ものすごい反響でしたね。
林 やっぱりみんな気になっていたんじゃない、と思いました。それとともに、書くことで自分のもやもやもすっきりしました。言わない後悔はどんどん大きくなりますが、一度口に出してしまえば気持ちが整理されます。たとえその後にどんな反応が返ってきたとしても、黙っている方が気持ち悪いんです。この件に限らず、社会にちょっかいを出すのも作家の仕事だろうなと思っています。
ハルコに関して言えば、彼女には決して“きれいごと”を言わせないようにしています。なぜなら、人生ってままならないものじゃないですか。彼女は好き勝手に生きているけど、自分の人生の落とし前は自分でつける覚悟を持っている。何を言っても、その言葉には責任がともなっている。だから痛快に感じるのかもしれません。普段我慢を重ねている人にこそ読んでほしいです。
――ハルコはときに厳しいことも言いますが、人に対する温かみがありますよね。林さんの人間観も色濃く反映しているように思いますが。
林 実は私、この3、4年で苦手な人がいなくなったんです。以前は、お金持ちの奥さんに根拠のない苦手意識を持っていました。でも実際にお付き合いをしてみると、すごく面白いんです。いまはどんな人に会っても、興味深いし、面白い人に会えたなあと感じます。
――これは林さんにとってどんな小説ですか。
林 毎月連載で一話完結だったので、書いているときは本当に辛かったです。打ち合わせや取材の合間に数枚書いて、家に帰ってまた数枚。ロサンゼルスからの飛行機の中でずっと書き続けたこともありましたよ。でも本にするときに改めて読み返してみたら、自分で書いた言葉なのにハッとしたり笑ったりで大忙し(笑)。
作家生活も30年を超えて、嬉しいこともありましたし、嫌な目にもたくさんあってきました。そこで培われた人生観が、無意識のうちに流れ出しているのがこの小説じゃないかなと。とはいえ読者には、読んで笑ってスカッとして楽しんでもらえたら、これ以上嬉しいことはないですね。
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