四十五歳から五十代はじめ……本当に忙しかったですね。
取材、ときにはバカンスで海外に何度も行ってますし、フランス料理習ったり英語習ったり、断食道場に行ったり、そうそう、「スマスマ」みたいなバラエティ番組にも時々出ました。
もちろん本業でも、はじめて時代小説に挑戦したり、直木賞をはじめ文学賞の選考委員もいくつも引き受けているし、週刊誌の対談のホステスも続けているし、頑張ってます。
その上、ボランティアのお役目もやたらと増えて……人を集めたり、企画の会合であちこち出かけたり、時間も労力も取られる大変な仕事が今に至るも増えるばかりです。だけど、引き受けたからにはきちんとやる、というのが私のような田舎の人間の特性なので、どんなに忙しくても、スケジュールにまず入れるようにして、会合やパーティーはサボらず全部出席します。
ちょうどこの時期は子育ての最も手のかかる期間とも重なってましたから、本当に自分で読んでいても、めまぐるしいほどですね。なにをするにしても体力がないと出来ませんから、とにかく早寝早起きの習慣がついてたことが大きいでしょうね。その点は、結婚したおかげですから、感謝しています。
五十二歳のときに週刊文春エッセイが1000回、アンアンの方は500回を超えたんですよ。多くの人に「なんでそんなにずっといろんなことできるの? 長年活躍する原動力はなんなの?」なんて聞かれます。
自分で思いますのは、やっぱり私にはネタを引き寄せる力がある(笑)。
例えば、タクシーに乗っても何事も起らない人がいる一方で、私はかなりの確率で面白い運転手さんにあたる。「あなたの周りではしょっちゅう面白い出来事が起る」って言われるほどですけど、これはすごく重要なことなんですよ。作家ってたくさんの人に会って、面白いと思う人間や世界に常に好奇心をもって入っていかないと……。
私はわりと無邪気に人に寄って行くんです。そこでよく人を観察します。別に、観察してネタにしてやろう、って意識してるわけじゃないのに、自然とそうなる。
漫画家の柴門ふみさんには「みんな林さんに騙されてる。気さくで面白い人だと油断してるうちに、林さんに観察されていることに気づいてないのよね」なんて言われたことありますけど。