工場は現代の秘境?
南 工場って、なかに入ったら怒られそうな感じがあるよね。むかし、パソコンのゲームができはじめの頃に、勝手に工場のなかに入っていって、その辺のボタンを押すといろいろなものがウィーンって動き出すっていうゲームを見たことがあって、すごくリアルなCGになってて、もう一度見てみたいと思ってるんだけど、ゲームに詳しい人に聞いてもみんな知らないって言うんですよ。
赤瀬川 それはゲームとしてはどこか目的地を目指すとかいうことなんですか?
南 いや、ゲームの全貌はわからないんだけど、CGがきれいだったのと、立入禁止って書いてある工場に勝手に入っていくっていうのが楽しくて。やっぱり立入禁止っていうのがいいのかな。
山下 入っちゃいけないと言われると、かえって入りたくなる。18禁と同じですね。ぼくは前から、美術館で18禁の展覧会をやれと言ってるんです。
南 入っちゃいけないと言われると、逆に入りたくなるからね。
山下 いまは逆で、夏休みになると、なんとか子供に来てもらおうと猫撫で声で「来てください」でしょ。
赤瀬川 「おいで、おいで」はだめだね。一番、信用できない。
山下 その点、工場は一般の人は入っちゃいけないわけですからね。それと、刑務所なんかも……。
赤瀬川 網走刑務所ね。あれはよかった。
山下 絶対に「来てください」じゃないところを、逆にどんと開いて博物館にしちゃった。あの裏返しの発想がすばらしい。
南 やっぱり、普通じゃ見られないところが見れるというのが嬉しいんでしょうね。いまでも刑務所関係の本って、けっこう売れてるみたいだし。
赤瀬川 花輪和一の『刑務所の中』も売れて、映画にもなった。
南 いま、そういう秘境がなくなってるんだよね。
山下 いまや工場が秘境なんですね。そういえば、『工場萌え』っていう写真集も売れてるみたいだし。
赤瀬川 工場、刑務所、警察とか軍隊も当然そうだよね。
山下 自衛隊は今回ちょっとだけ入りましたね。
南 体験入隊ほどはハードじゃないけど(笑)。
赤瀬川 さすがに体験入隊は体力的にもう無理だろうなぁ。三島由紀夫じゃないんだから。
山下 今回はパンチラを見たぐらいですね(笑)。だけど、自衛隊ってちょっと不思議というか、昔、飯島愛が深夜番組に出始めたころ、CDを出してそのプロモーションビデオを自衛隊で撮影してたんですよ。飯島愛が歌ってるまわりで自衛隊員が「イエー、イエー」とか言ってて、本物の戦車とかも映ってて。
赤瀬川 へえー、よくOKだしましたね。その点では警察の方がうるさそうでしたね。
南 あと、どこ行ったんでしたっけ?
山下 ごみ処理工場にも行きましたね。あそこも刑務所といっしょで、普通はわざわざ入りたくないところです。
赤瀬川 でも広島の谷口(吉生)さんが設計した工場は良かった。
山下 モダニズム・ごみ工場ですね。あと、時計工場やカメラ工場は完全にぼくたちの趣味の世界(笑)。
南 だけど、そのへんは普遍的な趣味だよね。時計とカメラと車が男の子の三大趣味らしいから。
赤瀬川 あとは野球博物館と日銀かな。
山下 まあ、前置きはこれくらいにして、読者のみなさんには本編を楽しんでいただきましょう。
*この鼎談は、『実業美術館』の冒頭に収録されているものです。
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