インタビューほか

『エコノミスト』編集部訪問記

文: 近藤 奈香 (ジャーナリスト)

『2050年の世界』 (英『エコノミスト』編集部 著/東江一紀・峯村利哉 訳/船橋洋一 解説)

 私にとっては、学生時代にジャーナリストを志すようになって以来、毎週欠かさず読み続けてきた特別な雑誌でもあった。

 もっとも件の編集者氏はそんなことは知る由もなく、単に私がロンドンの大学を出て、海外での生活が長いということで白羽の矢を立ててくれたらしい。その依頼内容は、ちょうどその頃、文藝春秋より単行本として出版されたばかりの本書『2050年の世界』が瞬く間に版を重ねていたため、この本の著者である「エコノミスト」の編集者たちに、同書のなかでは、必ずしも多くの言及がなされたわけではない、「2050年の日本」について改めて話を訊いてほしいというものだった。

 自宅に戻った私は早速手渡された同書を読み、その翌日の夜には、「エコノミスト」本社の窓口に国際電話をかけていた。

 ここからの展開がいかにも「エコノミスト的」だった。

 現地時間では朝、電話口に出た若いイギリス人女性は、私が「『2050年の世界』の日本での評判が良いので、もし可能でしたら編集長にインタビューを……」と話しだすと、“just a moment please”と遮って、保留メロディーが流れ出し、ほどなくして電話口には、“Hello?”という落ち着いた男性の声が聞こえてきた。

 この男性こそ、私が最も話を訊きたかった相手、『2050年の世界』編集長のダニエル・フランクリン氏だった。

 あまりの展開の速さに、驚きながらも、何とか取材目的を告げると、彼は嬉しそうな声で「この取材の為にロンドンまで? だったら、他の者にもインタビューされたらいかがでしょう? 出張でもしていない限り、ご対応させて頂けると思います」と約束してくれた。私はその場で本を開きながら、数人へのインタビューを申し込んだ。

 どこの馬の骨ともわからぬ日本人ジャーナリスト(それも駆け出しの!)の取材依頼を電話一本で受けてしまう度量の広さ、リアクションの早さに呆然としながらも、「これぞ『エコノミスト』だ」と嬉しくなってしまった。「来る者、拒まず」というだけでなく、たまたま飛び込んできた日本の小娘の話を聞いてみるのも何かのタシになるかもしれない、という純粋な好奇心以上のものを感じたのだ。

 というわけで、私は二〇一二年の九月のある月曜日の朝、「エコノミスト」本社ビルを見上げていたのである。意を決して、一階ロビーに足を踏み入れ、受付で来意を告げると、ほどなくして電話で会話をしたダニエル・フランクリン編集長本人が「やあ、ロンドンへ、ようこそ!」と笑顔で現れ、自ら編集部のあるフロアへと案内してくれた。

【次ページ】バッキンガム宮殿を望むオフィス

2050年の世界
英『エコノミスト』編集部・著/東江一紀、峯村利哉・訳/船橋洋一・解説

定価:本体950円+税 発売日:2015年03月10日

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