韓国第一八代大統領朴槿恵(バククネ)は、朴正熙(バクチョンヒ)元大統領の長女として広く知られていますが、それ以外のことについては、日本では多くが語られてこなかったように思います。そのためもあって、大統領就任当初、日本のメディアの大部分が、今度の大統領は「親日的な政治家」であり「日韓関係は改善されるだろう」と、少なからぬ期待を寄せたのだと思います。
朴正熙は戦前、創氏改名して高木正雄と名乗り、日本の陸軍士官学校を卒業した満州国軍人の経歴をもっています。韓国大統領となってからは、日韓国交正常化を成し遂げ、日本からの資金的・技術的な援助を大きな糧として、韓国の高度経済成長を達成させました。また、安倍晋三首相の祖父岸信介元首相とも親交がありました。
朴槿恵はその娘なのだから親日家だろうと思われたのでしょう。しかし朴槿恵は、大統領選挙に勝利した直後から、歴史認識・慰安婦・領土などの問題を持ち出し、反日の旗印を鮮明に掲げて政権を出発させたのです。当初からこれだけ反日姿勢を明確に打ち出した韓国大統領は、かつていませんでした。
なぜそうなのかを含めて、本書では、日本ではよく知られていない朴槿恵大統領の政治的な性格を、次の五つの時期の主な活動や出来事を通して、できる限りはっきりさせていこうと思います。
(1)一九七四年にテロの凶弾に倒れた母親の陸英修(ユクヨンス)に代わり、父親の朴正熙大統領のもとで国家のファーストレディとして活動した時期(二二~二七歳)。
(2)一九七九年に朴正熙が暗殺されて以後、政治活動から身を退いた時期(二七~四五歳)。
(3)一九九七年に野党(保守系)候補の大統領選挙運動に参加し、一九九八年に国会議員に当選して大統領候補となるまでの時期(四五~六〇歳)。
(4)二〇一二年一二月の大統領選挙に向けた選挙戦の時期(六〇歳)。
(5)二〇一三年二月に大統領となって以後(六一歳~現在)。