朴槿恵は、「朴正熙の権威」を巧みに生かして政治活動を展開してきたといえます。しかしそれだけで大統領になれたのではありません。
政治家朴槿恵の最大の特徴は、韓国の国民情緒(国民心情)の性格とその時々の流れをしっかり見すえながら、自らの政治的な立場や主張を「思いきりよく」変化させ続けてきたことにあります。韓国の政治・社会を動かす支配的なパワーは、現在では国民情緒から発せられるパワーだといっても過言ではありません。そこのところを、どのようにコントロールしていくかが、朴槿恵大統領の命運を決します。一つ間違えば、政権は崩壊への道を突き進むほかなくなってしまうからです。
そもそも韓国の大統領は、日本の内閣総理大臣より強大な権限をもち、五年もの任期が保証されているはずなのに、内政も外交も安定感を欠いているのはなぜでしょうか。すべてがその時々の国民情緒に大きく支配されるからです。
とくに朴槿恵政権は、その点が顕著です。任期の半分も終えていないのに支持率が低迷し、それゆえにさらに国民情緒に訴えようとして、政策がいっそう一貫性を欠く、という悪循環に陥っています。
国民情緒に最も訴えるのは、「過去清算」と「反日」です。なぜそうなのかを理解するには、韓国の戦後の歴史を押さえておく必要があります。朴正熙の娘である朴槿恵が、「反日」外交を展開する理由も、ここから見えてきます。
本書は、朴槿恵論であると同時に、現在の韓国を過去の歴史に照らし合わせて理解する現代韓国論でもあります。両者は密接に関わってきます。父と母を共に暗殺によって失ったその厳しく切ない境遇は、一人の人間として見た場合、十分同情に値するにしても、政治家としての朴槿恵は、行き詰まりを見せる今日の韓国を象徴する存在だからです。
(「はじめに」より)
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