書評

「小学校から英語を学べばペラペラになる」は誤りだ!

文: 行方 昭夫

『英会話不要論』 (行方昭夫 著)

英語ができなくて困った日本人がどれだけいるか?

 日本人が英語が出来ないのは、英語が使えないと生活していけないという切迫感、ハングリー精神がないからです。日本では、どんなに高度な学術書も母語で読めますが、そんな国は世界でもまれなのです。英会話ができなくて、本当に困った経験をした人は、一体何人いるでしょうか。

 日本人が本当に英語を身に付けようと思えば、よほどの覚悟が要ります。長期間、文字通り寝食忘れ無我夢中で学ばねばなりません。私自身、そうしましたが、成果が努力に見合っているかどうか、今でも疑問視しています。無味乾燥な暗記も必要です。英語との相性、記憶力、忍耐心も問われます。そこまでの覚悟がないのなら、いさぎよく英語へのこだわりを捨てるのが賢明ではないでしょうか。

 人口の半分近くの人が英語を使えるデンマークの場合と比較してみましょう。この国では、昔から、貿易に頼ってきて英語力なしでは国が成り立っていかないという事情がありました。その上、デンマーク語は英語に近い言語です。全く状況が違う日本で、いくら教育方法を改め、早期教育を始めたところで、自由に喋る人が増えるという可能性は極めて低いと推察できましょう。

 小学校での英語必修化がいよいよ実施される趨勢ですが、国語や算数や社会や理科などの科目にしわ寄せがきて、学力低下を招く不安がぬぐえません。大学入試へのリスニング・テストの導入が、読解力低下を招いたような事態にならぬかどうか。必修化には膨大な経費が掛かるのですから、損得勘定が必要です。既に200近くの私立小学校で英語を科目として学ばせています。その実績がどうであるのかなど、もっともっと検討すべきです。

 本書では、ここで挙げた以外にも、多くの人が英語・英語学習に関して抱いている疑問をいくつも取り上げました。英語学習に向ける熱意と時間と精力を、他のことに向けた方がよいかどうか、自分の英語との相性も考えて、派手な宣伝などに踊らされずに、冷静に考えて頂きたいと願ってのことです。

英会話不要論
行方昭夫・著

定価:本体700円+税 発売日:2014年10月20日

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