- 2013.09.06
- 書評
『ポーカー・レッスン』解説
文:文春文庫編集部
『ポーカー・レッスン』 (ジェフリー・ディーヴァー 著 池田真紀子 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
なおジェフリー・ディーヴァーは、二〇一〇年に初来日を果たし、東京の書店、丸善丸の内本店で記念講演を行ないました。そこでディーヴァーは、長編小説を書きあげるまでの舞台裏を詳細に語ってくれました。着想からプロットの構築を経て、第一稿を徹底的に推敲して最終稿へと仕上げてゆく過程は、まさに緻密の一語。こうした作業があってこそ、読者の注意を完璧にコントロールして、驚愕の罠へと誘い込むことができるのだと得心しました。
こうした周到さは短編の執筆にも発揮されています。それを証すのが、本書巻末にある「『恐怖』について」という小文です。これは収録作「恐怖」についてディーヴァー自身が書いた「解説」で、同作をどのようにして組み立てたのか、その内幕を明かしています。「恐怖」と合わせ読めば、「ドンデン返しの魔術師」の創作の秘密を垣間見ることができます。
さてジェフリー・ディーヴァーは創作意欲も旺盛で、一年にほぼ二作というペースで長編を発表しつづけています。ブレイク作となった一九九四年の『眠れぬイヴのために』(ハヤカワ文庫上下)以来、二十年近くにわたって、このペースを守りつつ、つねに新たな物語や趣向に挑戦しつづけていることは驚きに値します。今年(二〇一三年)秋にはキャサリン・ダンス・シリーズ第三作XOの邦訳が刊行されますが、これにつづく長編小説を、すでに三作、完成させています。
凄腕の殺し屋の手からターゲットを守り抜こうとするボディーガードの死闘を描いたノンシリーズ作品Edge は、一貫して主人公と敵との知的闘争をテーマとしてきたディーヴァーが、ゲーム性を突きつめた究極の作品(主人公はボードゲームのマニア!)。ファン必読のノンストップ・サスペンスに仕上がっています。
恒例のリンカーン・ライム・シリーズ第十作The Kill Roomも、ちょうどアメリカで刊行されたところ。アメリカの情報機関によって暗殺のために雇われたスナイパーを、その違法性を問題視した検事の依頼でリンカーン・ライムとアメリア・サックスが追うという物語のようで、ライムがひさびさにニューヨークを離れて捜査を行なうことになりそうです。スパイ・スリラー的な陰謀の迷宮にライム・チームが挑む野心作、早くも絶賛の書評があがっています。
さらにもう一作、ノンシリーズOctober List。まだ原稿があがったばかりですが、前情報によれば、映画《メメント》のように章ごとに「時間をさかのぼる」という破格の構成なのだそうです。ディーヴァーらしく、時間軸をさかのぼるたびに驚愕が待ち受けているということで、こちらも期待とともにお待ちいただければと思います。
ポーカー・レッスン
発売日:2014年10月30日
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