- 2013.09.06
- 書評
『ポーカー・レッスン』解説
文:文春文庫編集部
『ポーカー・レッスン』 (ジェフリー・ディーヴァー 著 池田真紀子 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
本書『ポーカー・レッスン』は、『クリスマス・プレゼント』(文春文庫)につづくジェフリー・ディーヴァーの第二短編集More Twisted(2006)の全訳で、一九九六年から二〇〇六年までに発表された作品が収められています(「恐怖」「ロカールの原理」「のぞき」は本書が初出)。
おなじみの名探偵リンカーン・ライムが活躍する「ロカールの原理」のほか、表題作「ポーカー・レッスン」ではポーカーの大勝負を描き、「生まれついての悪人」では物語のほとんどが小さな家の一室で進行し、「一事不再理」では白熱の法廷戦が展開、「ウェストファーレンの指輪」では百年ほど前のロンドンが舞台となるなど、バラエティに富んだ短編が並びます。
そしてもちろん、すべてにドンデン返しが仕掛けられているのです。
「欺(だま)される快感」を愛するかたには、これ以上の短編集はないと申し上げましょう。
本作の原題More Twistedは、『クリスマス・プレゼント』の原題Twistedを引き継いだものです。「twist」は日本語の「ドンデン返し」に近い意味の英語なので、この二作の題名を意訳すれば、『ドンデン返し小説』『もっとドンデン返し小説』。そんな題名に偽りなく、ディーヴァーは、ありとあらゆる手管を駆使して、わずかなページ数のなかで多彩なドンデン返しを実現しています。作品によっては二重、三重の反転の仕掛けられたものまであるほどです。
現代ミステリ作家に「短編の名手」は少なくありません。例えばローレンス・ブロックやピーター・ラヴゼイなどが名手中の名手と言えますが、彼らの作品とディーヴァーの作品では、趣が少し違うようにも思えます。ブロックやラヴゼイが、ドンデン返しや驚愕を通じて世界や人生の皮肉のようなものを描き出すのに対して、ディーヴァーはもっとピュアに「読者を欺すこと」に注力しているからです。その意味で、ディーヴァーの短編作品には日本のミステリに近い感触があると言ってもいいかもしれません。
ポーカー・レッスン
発売日:2014年10月30日
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