人気作家・あさのあつこさんが初めて挑戦した文庫書き下ろし小説「燦」が、ついに完結しました。燦・伊月・圭寿、三人の少年たちの葛藤と成長を描き、まだかまだかと新刊が待たれた大人気シリーズ――最終巻の第8巻「鷹の刃」刊行を記念して、あさのさんにお話をうかがいました。
――全8巻、書き終えられたいまの気持をお聞かせください。
ホッとしたと同時に、燦・伊月・圭寿の三人にもう逢えないんだ、というさみしさがあります。複雑な気持です。
この間、全巻並べてみたんです。丹地陽子さんのカバー絵が毎回素晴らしくて、拝見するのを楽しみにしてたんですが、あぁ、それももうないんだなあ、と。最終巻で燦と伊月の二人が再びカバーに登場しますが、第1巻の時と比べると、すごく大人っぽく成長している。そういうところを読み込んで描いてくださったのが、嬉しかったですね。
――時代小説で、少年を主人公にしたエンタテイメント、躍動する少年たちの「動と静」を書きたい、ということでスタートしたのが、2011年4月でした。
最初は、全4巻くらいのつもりで始めたので、こんなに長くなって自分でも驚いてます。
物語の大きな流れというのは、ラストが近づくと見えてくるのですが、その人にふさわしいゴールをちゃんと見つけてあげたい、と思ったら、まただんだん長くなってきて……(笑)。
――結末は、あさのさんが思い描いていたものになったのでしょうか。
実は、6巻目あたりで燦を国外へ出そうか、と考えていたんです。日本という枠組みに囚われずに生きていく、大陸とか海へ出すのはどうだろう――。でも書いているうちに、彼はちゃんと伊月と圭寿のそばにいて、田鶴の行く末を見届けるんじゃないか、と思ったんですね。心のままに生きるのではなく、いろいろな人間関係があるなかで、自分でそういう道を選ぶだろうな、と。
最初に考えていたラストとは違ってますが、物語を進めるうちに、彼ら自身が変えてきた、ともいえますね。