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三人の少年たちのゴールを見届けてほしい

三人の少年たちのゴールを見届けてほしい

「本の話」編集部

『燦8 鷹の刃』 (あさのあつこ 著)


ジャンル : #歴史・時代小説

――田鶴藩藩主となった圭寿が、江戸から戻って藩政立て直しをはかるにあたり、「頼む、手伝ってくれ」と燦に頭を下げます。そのあたりから、二人の関係が変化してきましたね。

 圭寿は藩主、つまり支配者ですから、人間的魅力がある人にしたかった。圭寿をずっと側で支えてきた伊月だけでなく、燦も徐々に圭寿に惹かれていったんですね。

――第5巻「氷の刃」が刊行されたとき、「三人に女の怖さを教えてやらなくちゃ」とおっしゃってました。

 言いましたね(笑)。結ばれるかどうかは別として、「女」という存在と少年たちがどういうふうに関係をもっていくのか――。少年たち同様、女たちも三者三様、書きたかったんです。

 静門院は最初、妖婦というイメージでしたが、それだけでは面白くない。妖力も魔力もない、一人の女性として、最後の結末も含め、自分の人生を全うする。身寄りのない子供たちの面倒を見ている、掏摸のお吉もそうですが、通り一遍の女性像ではない、個々の物語が立ちあがって行ったと思います。

――燦だけは早くから、篠音という想い人がいます。将来を約束しながら、燦が江戸にいる間に、何者かにさらわれてしまいます。

 燦には、何か負荷をかけたかったんですね。彼、超然としているじゃないですか。圭寿と伊月はすごい現実と闘っているのに。なので、田鶴に帰ったとき現実の重さをずしりと背負わせたかったのです。そのためには、篠音と八神(燦の最も親しい鷹)のどちらかを一時的にしろ、失うことが……と考えました。

――現実と闘っている、といえば、父と子の関係というのも大きなテーマです。後半になるにつれて、伊月の父・伊佐衛門の動きから目が離せなくなりました。

 人と人の絡みを書くのが物語だと思うんです。伊月は、まどいながらも自分に起きたこと全てを受け入れ、圭寿の陰で生き、支えていく決意を固めていく。シリーズを通して、一番成長をした人かもしれません。ただ、結末は余韻をもって終わりたかったので、あまり書きすぎないようにしました。あとは読者の方の想像力に委ねたいと思います。

――終わったばかりではありますが、今後スピンオフを書かれるご予定は?

 戯作者としての圭寿の葛藤、それを見つめる伊月とか、神波の財宝を得て変わる田鶴の未来とか、書かなかった場面で目に浮かんでくるところはありますが……。

 いまはとにかく、ようやくゴールした、という気持でいっぱいです(笑)。

あさのあつこ

あさのあつこ

1954年岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。1991年作家デビュー。『バッテリー』で野間児童文芸賞、『バッテリーII』で日本児童文学者協会賞、『バッテリー』シリーズで小学館児童出版文化賞、『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。児童文学からヤングアダルト、ミステリー、SF、時代小説などジャンルを超えて活躍する。著書多数。

燦8 鷹の刃
あさのあつこ・著

定価:本体520円+税 発売日:2016年08月04日

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