- 2014.09.03
- 書評
一気読みは確実の超面白小説
文:北上 次郎 (文芸評論家)
『ライトニング』 (ディーン・R・クーンツ 著/野村芳夫 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
以下はネタバレになるのでできれば先に本文をお読みいただきたいのだが、要するに本書はタイムトラベルものである。
実は私、タイムトラベルものが個人的に大好きなのだ。永遠のベスト1はケン・グリムウッド『リプレイ』(43歳の男が25年前の自分にタイムスリップしてもう一度人生をやり直すという話で、その年齢の読者が読むともう大変)だが、近年ではキング『11/22/63』も素晴らしかった。私はどちらかといえばキングが嫌いで(うますぎるから)、この大長編も最初は読む気がなかったのだが、ある評論家の書評を読んだら「大変だ」と立ち上がって、新刊の山からこの上下本を発掘して、仕事も忘れて読みふけった。うまいよなホントに。いくら反キングを標榜する私でもこの長編だけは認めなければならない。日本の作品なら梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』だ。もちろん、広瀬正『マイナス・ゼロ』も、北村薫『スキップ』も、重松清『流星ワゴン』も、浅田次郎『地下鉄(メトロ)に乗って』も忘れがたい。このジャンルには傑作名作が揃っているのだ。そうだ、翻訳小説でオードリー・ニッフェネガー『タイムトラベラーズ・ワイフ』もあった。こちらは恋愛小説の傑作である。
そういうふうに、タイムトラベルものが大好きで、いちばん脂の乗った一九八九年のクーンツが好きで、人生の真実もいいけれどホラ話も好き、という三拍子揃った方がいれば、本書は絶対のおすすめだ。厳しく言うならば、ヒロインを追ってくる理由がそれかい、との気がしないでもないが、そういう細かなことはいいのだ。このホラ話スリラーの圧倒的な面白さと迫力満点の展開を、二十五年後のいまも断固支持しておきたい。
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