歴史を書く覚悟とは
――藤原さんは、これまでも日本社会への様々な問題提起をしてきましたが、今回のように「歴史」を真正面から取り上げたのは初めてですね。
藤原 歴史について書くことは、本当に身の引き締まる思いがします。歴史観というのは、その人の人格や人間性、ものの考え方などすべてが凝縮されています。だから、この『日本人の誇り』を書いたことは、私が丸裸になったも同然なのです(笑)。私も覚悟を決めてかかりました。
『国家の品格』を書いた時もそうでした。あの本で私は、自由、平等、民主主義への疑問を投げかけました。現代人にとって当然の権利だと思われているものが総攻撃されたわけですから、圧倒的な非難を浴びるのではないかという恐れも、正直あったものです。でも、そのリスクを引き受けてでも書いたおかげで、多くの読者に受け入れてもらえました。
今回の『日本人の誇り』は、その時以上の恐れと覚悟です。なかでも近現代史について書くことは、危険だといえるし、一種の冒険です。なにせ帝国主義の下、世界中から否定された戦前の歴史を、東京裁判史観をそのまま受け入れている日本人を前に再評価しようとするのですから。まさにオール・ジャパンを敵に回して喧嘩をするようなものです。
東京裁判史観では、日本の戦争は侵略戦争だったとされますが、はたして本当にそうでしょうか。ペリー来航による開国に始まる日本の百年戦争は、帝国主義下における涙ぐましい独立自尊のための戦いだったのです。結果として、日本は甚大な犠牲を払った末、原爆まで投下されて大敗北を喫することになりましたが、一方で世界史的にみれば大殊勲でもありました。それは帝国主義と植民地主義の時代に終止符を打ち、人種差別を撤廃させることに大きく貢献したことです。もしあの戦争で日本が戦わなければ、帝国主義と植民地支配はさらに百年は続いたとも言われます。
私たちの先達は、こうした気高い功績を歴史にとどめたのだということを、現代に生きる日本人はもう一度噛みしめるべきです。そうすれば、自ずと自信と誇りを実感できるに違いありません。
日本人の誇り
発売日:2012年01月20日
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