なんと表現したら良いのだろう。この、読後感。
岡田光世さんが、またしてもやってくれた。
異なる文化、人種のるつぼと言われる大都会・ニューヨークの、日常のささやかな営みの中に心に深く染み入る感動。その数々を、いつも自然体で好奇心の赴くままの言動をする光世さんが、感じたままをリズミカルに、今回も素直な文章に置き換えてくれた。
ほっこりした温かい気持ち。爽やかなスッキリ感。気がつかなかったこと、共感することがいっぱいある。このシリーズの特徴のひとつ“小粋な英語のフレーズ&光世流の訳”が随所に出てきて、鮮度の良い英語表現を味わいながら学べるお得感も嬉しい。
人はひとりでこの世に生を受け、ひとりでサヨナラをしていく。しかし、ひとりでは生きられない。厳しいことも多々あり戸惑うことや失望することもあるけれど、優しいふれあいもたくさん体感しながら、自分の人生を全うしていく。毎日の生活の中でどれだけ優しいふれあいがあるかは、どれだけ自分にその気があるかにもよるのではないだろうか。そう、背中をポンッと押してくれその気にさせてくれるヒントが、光世さんの『ニューヨークの魔法の約束』には溢れている。見過ごしてきたかもしれない瞬間の出来事にふっと心を寄せている自分を、新たに発見できるかもしれない。
そのひとつが、著者の「はじめに」にこう記されている。
――この街は意外にも、オープンでフレンドリーである。横柄で愛想のない人に出会っても、めげずに心を開けば、それを実感するはずだ。――
そもそも“出会い”とは、降って湧いてくるものではない。まず自分が“心を開く”こと。次に自分が“出る”という行動に移す。そこで初めて“会える”のでは? 光世さんがアメリカでいくつもの優しいふれあいを体験しているのは、彼女自身がオープンでフレンドリーだからなのだ。人は、自分の本来の性質、性格はなかなか変えられないが、自分の気持ち次第で、行動は変えることができる。もっとオープンになってみようかしら、と読者も感じるのでは? 人と人をつなぐたくさんの「優しいふれあい、温もりの出会い」は、日本のどこかでもきっと日常的に交わされていると思いたい。
どの章も愉しいが、本書の中で私が読みながらおもわず笑ってしまい、のちに頷いたのは、著者がマディソン・スクエア・ガーデンにビリー・ジョエルのコンサートへ行ったときの「A New York State of Mind ニューヨークな気分」の話。
身長百五十センチほどの光世さんがバケツサイズのポップコーンを抱え、総立ちの大観衆の中でどんなにジャンプしてもステージは見えない。そうだっ、と椅子の上に立ち上がるやいなや大柄の警備員に叱られ、ポップコーンのバケツを蹴飛ばしては中身をこぼし、を繰り返す。泣きべそ面で必死の光世さんを想像すると、つい笑っちゃう。が、ユーモア感覚のある警備員との優しいふれあいがあり、結果、彼女はハッピーに。あぁ日本にも、こういう警備員さんがいたらなぁと……いえどこかには、きっといる?
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