「ニューヨークの魔法」シリーズ 第6弾。人と人とのささやかな触れ合いをニューヨークを舞台に描く。ニューヨークの小粋な言葉があふれる魔法の本たち。どの話にも、簡単なのに心に響く英語のフレーズが入っている。どの本から読んでも、胸を打つ! 「売れてる本」(朝日新聞)、「ポケットに1冊」(読売新聞)、「ベストセラーの裏側」(日経新聞)など人気書評コラムで取り上げられた話題のシリーズ。
「ニューヨークって怖いところじゃないの? 本当にこんなふうに、他人同士が言葉を交わし合うの?」
私はすでに、ニューヨークについて何冊もエッセイを書いてきた。私の本を読み、半信半疑だった読者。自分の目で確かめるために、お金を貯めて、ニューヨークへ行ってみた。
私が描く街が、確かにそこにあった、という。
ニューヨークは、人と人の心が触れ合う瞬間に満ちている。人と人の垣根が低く、他人同士が気さくに言葉を交わす。そう書くと、「東京だってそうだ。一般論で語るな」と言われてしまいそうだ。
でも、ぜひ、ニューヨークに行ったら、街を歩き回ってみてほしい。地下鉄に乗ってみてほしい。スーパーに行ってほしい。スーパーのレジで並んでいると、「セール品のオレンジジュースがあったよ。替えてきたら?」と後ろにいる女性が教えてくれる。
地下鉄の路線図を眺めていると、「どこに行きたいの?」と誰かが声をかけてくる。「一眼レフ、バッグにしまっておかなくて大丈夫?」と“お節介”を焼いてくる。
昔からの知り合いのように、街のあちらこちらで他人同士がおしゃべりしている。
時には思わぬ出会いがあり、本書でもそんな話をいくつか紹介している。地下鉄のホームでおしゃべりした女性が、突然、秘めていた親への思いを私に明かし、泣き出した。
ニューヨークで、横柄な態度やマナーのなさに腹を立てることもある。もちろん、東京でも、オープンな気持ちで街を歩けば、時に似たような経験をする。それでもやっぱり、頻度は少ない。
客引きはともかく、相手の方から声をかけてくることは、少なくとも私の経験ではあまりない。文化や習慣、気質の違いもある。どちらがいいとか悪いとか、という問題ではない。でも、昔は東京でも、もっと他人と言葉を交わしていたのかもしれない。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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