1 『カラフル』森絵都
生前の罪で輪廻サイクルから外されたぼく。
だが天使業界の抽選に当たり、自殺を図った少年の体へホームステイ。新生活が始まった
今回聞いた図書委員のほとんど全員が中学生のころに『カラフル』を読んでいました。亡くなった主人公がこの世に戻ってくるという設定からファンタジーだと思って読み始めましたが、リアルな現実が描かれていたので、驚いた記憶があります。一人の人も見方によって評価が変わるんだというのは、大きな発見でした。(千葉県)
楽しくないと感じる日常でも、こんなはずじゃなかったと思う人生でも、一度離れた場所から見つめ直せばまた違う姿が見えてくるのだというメッセージを私はこの話から感じました。主人公が死に、何もかもを忘れ、自分が自分だったということも知らずに日々を過ごし、次第に自分が置かれていた立場を客観的に見つめながらも世界は意外にカラフルなものなのだと気付いていく過程に心を強く打たれました。何か苦しい物事に遭った時や、どうしようもなく悲しい時でも、一度落ち着いて自分自身を見つめ直し、生き続けることができるようになりたいと思いました。(宮城県)
初めて読んだのは中学生のときでした。一度死んだのに抽選に当たって甦るなんて、非現実的なファンタジーなのに、「ぼく」が感じている家族への不信感や苛立ちは現実的で、そのギャップが好きでした。高校生活が不安だったと家族に打ち明ける「ぼく」にとても共感して、同時に高校生活への希望ももらったように感じていました。感想を書くために高校の図書室の本を手に取ると、たくさんの人が読んだのか、図書委員で張ったビニールカバーも角のところが擦り切れていて、ほかの本に比べてぼろぼろでした。実際に高校生になった今読んでみると、あの頃の不安な気持ちが馬鹿みたいに思えます。拍子抜けするくらい毎日楽しくて、昼休みに友だちと騒いだり、掃除をさぼって叱られたり、「ぼく」が望んだ普通の高校生活を送っています。そして、来年の春は高校も卒業します。ここから先は、きっともっといろんな色に溢れていて、私はもっといろんな悩みに直面して、迷って、後悔するでしょう。でも、だからこそ楽しくて、それが私が生きている証拠なんだって思える勇気をくれた本でした。(熊本県)
とても奥が深いストーリーです。最初は主人公も周りの人も、とても嫌な人です。世の汚さと、人の汚さの中で生きています。しかし、主人公が沢山のことを知り、考え、見方を変えていくことで、汚さの中に埋もれかけていた沢山の人の“色”に出会います。痛みと、強さを知っていきます。そうするうちに、主人公の中に、ある思いが生まれていきます。ラストは衝撃的でした。でも、胸が温かくなる話です。(岡山県)
人は、なかなか自分の大切なものに気づけない。また、まわりの人や近くのものが見えないということも案外多い。この本の主人公の真は、まさにそうであるように思われた。もし彼に再挑戦のチャンスが与えられなかったとしたら、周りの人々の思いには気づけず、それまでの誤解も解けなかっただろう。彼に再挑戦までの修業が与えられて本当に良かったと思う。そして私たちにも真のように、自分を客観的に見つめ直す必要があるのではないだろうか。人は誰にでも自分のことに一生懸命になるあまり、周りが見えなくなることがある。少しずつの小さなすれ違いが多くの誤解を生んでしまうことだってあるのだ。この物語で真は、再挑戦できる抽選が当たったことにより自身を見直すことができた。が、現実ではこのようなことはできないだろう。そうであるからこそ、自分で物事を一歩引いた客観的な姿勢で見つめられる機会を設けて行きたいと思う。(東京都)
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『李王家の縁談』林真理子・著
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