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高校生が選んだ「文春文庫」人気作品ベスト30

高校生が選んだ「文春文庫」人気作品ベスト30

文藝春秋90周年記念事業 高校図書館「文春文庫」プレゼントより

出典 : #文春文庫
ジャンル : #歴史・時代小説

5 『悪の教典』(上下)貴志祐介
有能な教師の仮面をかぶった学園に潜むモンスター、ハスミンこと蓮実聖司。モリタートの口笛とともに完璧な犯罪が重ねられていく

蓮実という男はまるで媚薬を隠し持った孤高の野良猫のようだ。それも、不幸と幸福を同時に呼び寄せる仮面をかぶった黒猫。彼の本性は一体どこにあるのだろう。生徒に英語を教えるときでも、その生徒を残虐に殺す時でも、彼には一片の隙もないように感じた。お手製の操り人形を操作している彼の本当の姿は、読者には見えない。私にとって彼はひどく矛盾した人間だ。作られ捏ねられ、彼自身は本当に失われてしまっているかのようなのに、操り人形にしてはリアリティがありすぎる。どっちがどっちなのか解らなくなる。けれど、その矛盾が心地よくて、矛盾そのものがきっと蓮実の魅力なのだろう。計算づくの上で感情を一切排除したはずなのに、本当の人間よりも人間らしい。その偽りの人間らしさが、私が蓮実を大好きな理由だ。どこにもいない彼は、だからこそきっとどこにでもいる。この瞬間もどこかを徘徊し、完全犯罪の手はずを整えているのだろうか。(東京都)

なぜ彼は生徒を次々と殺していくのかわからなくて、それが逆に怖かったです。もし、自分の学校で同じようなことがあったら……「学校」という場所が舞台で、自分達に最も関わりがある場所なので、想像がリアルにできてものすごく怖かったです。(北海道)

先生が生徒を次々と殺して終わりかと思いきや、生徒たちが殺されないようにがんばる姿も描かれていて、ただのサスペンスホラーではなく、最後には光り輝く友情以上のものがあって、読み終えた後、私は恐怖ではなく感動をおぼえました。(神奈川県)

完璧な人間なんていないことを人間らしく表現してあるのが恐怖でした。そこに中毒性があって何度も見られる楽しさがありました。笑いながら人を容易く殺すさまが狂気じみていて作品の黒さがより濃くなるところがものすごくおもしろいです。二度読みすると主人公の行動が理解しやすくなるのが二度美味しくて好きです。(福島県)

私がこの本を読んで思ったことは、人の命は軽いものだということです。普通は「重いもの」だろうけど、主人公の蓮実先生があまりにもたんたんと人を殺していくのでなんとも言えない感情になります。私には感情があります。ですが、蓮実先生には感情や共感がない。そういったことで数々の殺人を起こしていき、自分の夢見る王国を築こうとしているのはまさにミステリーだと思いました。「人を1人殺すと殺人犯だが、10万人殺すと英雄」という言葉が蓮実先生にぴったりでぞっとします。(福島県)

6 『手紙』東野圭吾
罪を償うとは、絆とは……。強盗殺人犯の兄を持った少年の姿を通し、犯罪加害者の家族を真正面から描いて感動の渦を巻き起こした問題作

この作品は、殺人を犯した犯人の家族、つまり加害者側の家族について描かれた本です。主人公は「強盗殺人犯の弟」となり、進学・就職・恋愛など様々な経験をするが、そこには加害者側の家族ならではの問題が立ちふさがってきます。人の絆とは何か、罪を償うとはどういうことなのか、主人公の最後の決断は正しいのか、たくさんのことを考えさせられる作品です。(岡山県)

「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない」という台詞は、ずっしりと心に響いた。読みながら居心地の悪さを感じた自分自身も差別や偏見だらけであると教えられた一冊である。(香川県)

主人公である武島直貴は、強盗殺人犯である服役中の兄を持つ。あるときはそれを隠し、またあるときはそれを明かし、多くの人々と接する中で、最終的にある答えにたどり着く。「絶縁」――それが彼の答えだった。私は、その答えについてはおおむね肯定的である。それは当然の、とってしかるべき選択であると思うし、それが冷酷な行為であるとは思えない。主人公の言うとおり、それは罪人に科せられるべき罰であるのかもしれない。問題は、彼をそうさせるに至るまでのあいだに出会ってきた人々の、恐ろしく現実的な視線である。(東京都)

【次ページ】次は第7位~第8位作品の感想です

 

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