──この本の最初の読者になれたことを非常にうれしく思います。
岡田 それはもう、まっさきに読んでいただかないと。
──変な役得というか、映画評論に携わっていて本当によかったなあと思いました。スケールが大きくて、どこからお尋ねしていいのかわからないくらいです。『鏡の女たち』を見たときに感じたように、とにかく大きすぎて……。
岡田 あのときは素敵な映画評をいただいて、本当にありがとうございました。
──あれでもまだ足りません(笑)。ここにお書きになっていることを読んで、『エロス+虐殺』と『鏡の女たち』はもう一回見直さなければいけないと思いました。いや、ここに出てくる映画はみんな見直さなければいけないと思いました。 感想をまず申し上げますと、とにかく、非常に美しいものがいっぱい出てきます。冒頭の、宝塚の楽屋から舞台に出たときの光の感じ。夢まぼろしのような人生最初の記憶ですが、非常に美しい。
岡田 あのことは本当にはっきりと覚えています。何歳だったかわからないんですけれども、強烈な記憶として残っているんです。
──まず、すごく強い光と綺麗な宝塚のおねえさんたちから始まったということが、読み終わると宿命のような感じがします。最後は、今までの登場人物がみんな出てきて、世界中からいろんなコメントを述べるいろんな人たちが出てきてフィナーレになるんですけれど、夢のように美しい。 たとえば砂漠を旅すると、少年と少女が子羊を抱いて出てきて、恵まれたお金と交換に子羊を渡して去ってゆく。持て余して子羊を放すと、子供たちのあとを追ってゆく場面。吉田喜重監督がその光景を見ながら、「神がなせる業だ」とつぶやく。まるで短篇小説です。 それから写真の美しさですね。写真だけで買う人もいるでしょう。五歳のときのお写真なんか、これは十九世紀のドイツのお屋敷に住む、リルケの少年時代の写真に似ている(笑)。そう、最初にまず思うのは、美しいものがいっぱい詰められているという印象です。そして、本文を読みはじめて思うのは、知性ですね。文章がとにかく明晰(めいせき)です。
岡田 すごく男っぽいでしょう?
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