凄味を感じるほどの純粋な愛とは<br />執筆の舞台裏から最新作まで語り尽くしたトークイベント

凄味を感じるほどの純粋な愛とは
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にご蔵（イラストレーター）

『伶也と』（椰月美智子著）

ジャンル : #小説

1行ごとに泣きながら書く

椰月美智子さんの著作。左から『純愛モラトリアム』（祥伝社文庫）、『恋愛小説』（講談社文庫）、『伶也と』（文藝春秋）、『かっこうの親もずの子ども』（実業之日本社文庫）

にご蔵 先ほどの話にちょっと戻るんですけど、小説は担当編集者さんと話し合いで題材を決めて書き始めるとおっしゃいましたが、「これちょっと今回書いてみたいから、私のわがまま通させて」みたいな小説やエッセイはありますか？

椰月エッセイがまさにそうです。『ガミガミ女とスーダラ男』（講談社文庫）は、我が家のことを書いたので、書いているときはすごくストレスが解消されたという……。

にご蔵 すごい内容ですけど、全部事実なんですよね？

椰月そうです。でも、軽く抑えてあります（笑）。

にご蔵 かなりの当事者である旦那さんはお読みになりました？

椰月いや全く読みません。活字が大嫌いなので全然読まない。私の作品も一作も読んでないと思います。最初は「webちくま」のウェブ連載でしたが、1回か2回分読んで、「なんかもう目が痛くなった。目が見えなくなった」と言って、どこかに行ってしまいました。

にご蔵 小説では、そういうものはありますか？

椰月『恋愛小説』（講談社文庫）は、すごく書きたくて書いた作品です。20代の頃に強烈な恋愛をしていたことがあって、その残り火のような思いがくすぶっていたので、あのときの思いを全部書いてみたいという衝動に駆られて書きました。幼稚で愚かな恋の集大成というか、いろんな、キレイごとでは済まされない女の子の気持ちを書いたので、これはぜひ、読んでほしいです。

にご蔵 20代の女の子の心理が分かりたい方はこれを読めばいいと。

椰月そうです（笑）。

にご蔵 あと、椰月さんの過去の強烈な恋について知りたい人もこれを読めばいいと。

椰月そうです（笑）。

にご蔵 でも、単行本のときに近しい世代の女性からは共感が得られなかったという話をうかがったこともあるんですけど。確かにどろどろの20代が満載……でもいい本だと私は思います。

椰月私も思います（笑）。

にご蔵 椰月さんの小説には、10代の女の子とか、幼い男の子だとか、老人だとか、若い女の子、ちょっと年配の女性・男性と、いろいろな登場人物がいますが、すごく会話が生き生きしていて、言葉遣いがリアルな気がするんです。そういった言葉の選び方はどうやって習得しているんですか？

椰月ほんとにもう、捏造、妄想です。

にご蔵 タイトルの付け方も、余韻があったり、その先に自分で言葉を見つけてみたくなったりするような雰囲気のものや、考えさせられるものとか、すんなり読めないものが多いんですけど、タイトルってどうやって決めるんでしょうか。

椰月タイトルありきで書くものと、書いてから決めるものがありますね。最初に決まっていたほうがぐっと来るいい感じがしますね。あとから考えると、全然決まんなくなっちゃうときが多いです。

にご蔵 『恋愛小説』『かっこうの親もずの子ども』『伶也と』あたりは？

椰月それは最初から決まっていましたね。だから素晴らしい小説です（笑）。