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凄味を感じるほどの純粋な愛とは<br />執筆の舞台裏から最新作まで語り尽くしたトークイベント

凄味を感じるほどの純粋な愛とは
執筆の舞台裏から最新作まで語り尽くしたトークイベント

にご蔵 (イラストレーター)

『伶也と』 (椰月美智子 著)


ジャンル : #小説

主人公の直子は、人間臭くていい女

にご蔵さんは『ししまるこよみともだちめぐり』で人気を集めているイラストレーター。椰月さんとの息のあったトークに、会場は笑いにつぐ笑いに包まれました

にご蔵 『伶也と』では、最初に衝撃的な新聞記事から始まって、ふたりの結末が明かされます。その後、出会う前に話が飛んでその後は時系列になっていく。今まで椰月さんの小説ではなかった書き方なんですが、最初にネタバレのようなものを持ってきたのはなぜでしょう?

椰月 新聞記事には二人が一緒に死んでいる様子が書かれているんです。というのは、まず二人が畳で抱き合うようにして死んでいるっていうシーンが頭に浮かんだんですね。悲しくはなくて、陶然とした感じの美しい情景が頭に浮かんだので、そこから書き始めようと思いました。

にご蔵 読みながらも冒頭のシーンが頭に残って、どういう物語なのかどきどきしながら読みました。主人公・直子の30代前半から70代までの半生ということですが、どういったところに注目して欲しいですか。

椰月 私、直子にあまり共感できなくて。共感はできないけれど、人間臭いところもあっていい女だなあと思いながら、同じ部屋で見ていました。純愛だとは思いますが、自分の友達にいたら止めるし、自分は絶対こんなことはできないですね。妄想でやめておきます。

にご蔵 ある種かっこいいっていうところになりませんでした? 直子の、こんな生き方ってあんまりできないと思うんですよ。好きになって、積極的ではなく割と受身の態勢でただひたすらこう、伶也を守り続けるみたいな。ある種できないかっこよさがあると思うんですけど。

椰月 うーん……想像はできるけど憧れることはない感じですね。いろんな人と付き合ったほうがいいって思っちゃう(会場笑)。

にご蔵 作家からそんなふうに思われている直子さん。でも確かに、献身的でありえないくらい純粋で、友達だったら止めたほうがって思いますね。その献身さですか。

椰月 はい、そのあたりを注目していただければ。自由奔放な『恋愛小説』の美緒と対極にいるのが、この『伶也と』の直子なんです。直子の、伶也への愛は崇拝に近いものだと思います。純粋さゆえの凄みがあります。

にご蔵 『伶也と』もそうですが、椰月さんの作品には、母親と娘の間に距離があって、逆に父親や男兄弟はあまり親密には関わってないんだけどどこか通じ合っている感じがします。それはなぜでしょうか?

椰月 そう……ですね。母とは特に仲が悪いわけではないんですけど、私は身内に容赦がない性格なので、高齢の母にもきついことを言ってしまったりするんですけど(笑)、父親は私が26歳のときに亡くなっているので、何でしょうね、あまり話す機会がなかったからなのか、父親に対する思い入れがあって、ちょっと盛っていい風に書いちゃうところがありますね。それも最近気が付いたんですけど、自分の小説ではお父さんばかりひいきして書いている感じです。

にご蔵 『伶也と』の中にゴライアスの歌う歌詞が書かれているんですが、これにメロディをつけたり、実際自分の中で作曲しちゃったりとかってありますか?

椰月 いえ、全然。音楽のセンスがまるでないので。歌詞を無理やり作って、って感じですね。

にご蔵 実際にありそうな歌詞だったので、曲をつけていたのかなって思っちゃったんですけど。

椰月 いえいえ、どなたかぜひ。

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伶也と
椰月美智子・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2014年11月13日

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