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吉村萬壱×長嶋有「13年目の同窓会」あえて取材しないで書く理由

吉村萬壱×長嶋有「13年目の同窓会」あえて取材しないで書く理由

「本の話」編集部

『ボラード病』(吉村萬壱 著)刊行記念トークイベント


ジャンル : #小説

吉村萬壱は1人しかいない

長嶋有1972年生まれ。2001年「サイドカーに犬」で第92回文學界新人賞、02年「猛スピードで母は」で第126回芥川賞受賞、07年「夕子ちゃんの近道」で第1回大江健三郎賞受賞。他の著作に『フキンシンちゃん』『問いのない答え』など。

長嶋 でものたうち回ったのち、2003年に見事「ハリガネムシ」で芥川賞を受賞したじゃないですか。

吉村 はい。これはでも、本当に実力だったのかどうか……。

長嶋 実力ですよ。

吉村 ええ、まあ実力なんですけど(笑)、巡りあわせというかね。ただこういう感情って、作家はものすごくあると思うんですよ。

長嶋 あいつばかり売れて、とか、あれが重版なんて、とかね。なんか暗い話になってきたな(笑)。僕らと同じ2001年にデビューした作家で、島本理生さんや綿矢りささんは別として、いまも書き続けている人って少ないですよね。だから、もはやいがみ合っている場合ではないというか……。いやべつに、いがみ合ってないけど(笑)。前作の『独居45』から5年あきましたが、この間は結構ジリジリしてたんじゃないですか。

吉村 いや、実はそうでもない。ひたすら疲れていました。教師と作家、二足のわらじをはいてきたんですけど、だんだん辛くなって……。夜8時頃に家帰ってご飯食べて、気が付くと朝の5時になってる。気絶するように寝てるんですわ。で、シャワーを浴びてまた仕事に出かける……。週末はひたすら寝だめです。

長嶋 そうなるでしょうね。

吉村 両立できないことが、小説を書かないことの言い訳になる。逆に学校がうまくいかないときは、僕は作家で大変なんだからしょうがないわ、となる。このままだと両方が中途半端でだめになる思うて去年の春、教師をやめたんです。先生の代わりはおるけど、吉村萬壱は1人しかいない、と自分に言い聞かせて。

長嶋 先生をやめられて、いつ頃から「ボラード病」を書き始めたんですか。

吉村 やめたあと3カ月間は仕事をしないと決めてたんです。ものすごい解放感で寝てばかりいましたね。夜中の3時にスーパー銭湯いったり、俺は自由やーっと。でもね、3カ月たつと人間て弛緩してくるんですわ。これでいいのか、小説を書くためにやめたんじゃないのか、と。で、「文學界」に締切作ってもらって、夏頃から1日1章ずつ書き始めたんです。

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文春文庫
ボラード病
吉村萬壱

定価:572円(税込)発売日:2017年02月10日

文春文庫
問いのない答え
長嶋有

定価:869円(税込)発売日:2016年07月08日

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