本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
魔法使いになりたかった!

魔法使いになりたかった!

文:中江 有里 (女優・脚本家)

『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』 (東川篤哉 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『魔法使いと代打男のアリバイ』

 犯罪といえばアリバイ、アリバイといえば映画「影武者」……古い? 本作では野球選手である菅原武彦そっくりの「代打男」が菅原のアリバイを証明する。

 ところで殺された元プロ野球選手の村瀬修一のニックネームが「顔だけ一流選手」というのに吹いた。殺されて気の毒だが、どんな顔なのか一瞬で良いから見てみたい。

 この作品ではマリィの魔法が事件解決の糸口となる。といっても、事件を意識して使った魔法じゃないけど、結果的にアリバイを崩したのだから、マリィ様々である。

 ここまで読んでお分かりだろうが、魔法使いはミステリとあまり関係もない。厳密にいえば、小山田刑事を救ったり、協力したりするけど、毎度不思議な魔法を披露して、読者を楽しませ混乱させていく。

 そう、一番のミステリは魔法使いマリィの存在だ。いったいなぜ、ここにいるのか。もちろん真相は著者である東川先生しか知らない。

 そこで推理してみよう。魔法使いがここにいる理由を。

 面白いから。

 かわいいから。

 事件を引っかき回すから。

 魔法使いが求められているから。

 どれも当たっていると自負している。四つめの理由は、冒頭に書いたとおり、わたしの子どもの頃からの願望から来ている。

 マリィがいない世界より、マリィがいたほうが楽しいし、面白いし、なんといってもマリィはかわいい。

 くせになりそうな魔法使いマリィのシリーズは、この後『魔法使いと刑事たちの夏』に続く。本書の最後でマリィは小山田家の家政婦になり、今後もあらゆる事件に顔を突っ込んでいくことだろう。

魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?
東川篤哉・著

定価:本体550円+税 発売日:2015年04月10日

詳しい内容はこちら  特設サイトはこちら

ページの先頭へ戻る