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流出情報が売買される「サイバー闇市場」の実態

流出情報が売買される「サイバー闇市場」の実態

文:高野 聖玄 (スプラウト取締役)

『闇ウェブ』 (セキュリティ集団スプラウト 著)


ジャンル : #ノンフィクション

『闇ウェブ』 (セキュリティ集団スプラウト 著)

 そこで取引されているのは流出情報だけにとどまらない。麻薬、偽造パスポート、偽造免許証、偽札、銃器、児童ポルノ、サイバー攻撃、殺人請負といったありとあらゆる違法品や犯罪サービスが売買されており、まさに「犯罪の総合デパート」といった様だ。サイバー闇市場全体の経済規模を示す正確な数字はないものの、一部の「人気」サイトではかなり大きな規模での売買が行われているとみられる。

 例えば、2013年10月に米連邦捜査局に摘発された違法サイト「シルクロード」は、その取扱商品の幅広さから「闇のアマゾン」などと呼ばれたが、開設から約2年半で120万件の違法取引が行われ、運営首謀者は80億円以上を荒稼ぎしていたと言われるほどだ。シルクロードは摘発されたが、その後第二、第三のシルクロードが次々と生まれ、捜査当局とのイタチごっこが続いている。

 本書は、その現在進行形で拡大するサイバー闇市場に少しでも肉薄しようと試みた一冊だ。インターネットの奥底であるダークウェブに澱のように溜まっているのは、デジタルデータ化された人間の欲望そのものと言える。サイバー闇市場の拡大は、裏返せば表社会でまっとうに生きている人間たちの富が奪われているということでもある。もし不幸にもサイバー犯罪の餌食になってしまった場合、企業であればそれまで培ってきた顧客からの信頼や知的財産を失うかもしれないし、個人であれば自分や家族のプライバシーが脅かされ、生活そのものが危険に晒されるかもしれない。そして、それは誰の身にも起きえることだ。

 サイバーセキュリティ企業に身を置くものとして正直にお伝えしたいのは、サイバー空間は守る側よりも攻撃する側のほうが圧倒的に有利だという現実だ。不条理なようだが、インターネットの利便性と引き換えに我々に突きつけられた難題である。だが、難題を前にただ尻込みしている訳にはいかない。前に進むためには、まずサイバー空間の現実を直視することが大切だろう。本書がその一助になれば幸甚である。

高野聖玄(たかの・せいげん)

スプラウト取締役、「THE ZERO/ONE」発行人。1980年生まれ。経済系出版社でのインターネット事業の開発などを経て、2005年に会員制情報誌『FACTA』(ファクタ出版)の創刊に参画。IT業界から経済事件まで幅広い分野の取材に携わる。2012年12月にスプラウトを創業。2015年より現職。


セキュリティ集団スプラウト

正式名称:株式会社スプラウト。2012年創業のサイバーセキュリティ企業。ホワイトハッカーと呼ばれる人材を中心に、サイバーセキュリティ分野に精通したコンサルタントやリサーチャーらが集まった専門家集団。企業や官公庁に対しサイバーセキュリティの支援を行っているほか、本書の下敷きとなったオンラインメディア「THE ZERO/ONE」や、国内外のホワイトハッカーと企業を結ぶバグ報奨金プラットフォーム「BugBounty.jp」の運営などを行っている。また、世界最高水準のセキュリティ強度を実装したクラウドストレージ「SolidHub」の開発などにも取り組んでいる。
http://sproutgroup.co.jp

文春新書
闇ウェブ
セキュリティ集団スプラウト

定価:858円(税込)発売日:2016年07月21日

電子書籍
闇ウェブ
セキュリティ集団スプラウト

発売日:2016年07月29日

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