書評

担当編集者が語る
ノーベル賞受賞 山中伸弥教授の素顔

文: 池延 朋子 (ノンフィクション局編集者)

『「大発見」の思考法』 (山中伸弥・著 益川敏英・著) /『生命の未来を変えた男 山中伸弥・iPS細胞革命』 (NHKスペシャル取材班・編著)

 10月8日、50歳の若さでノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥さん。もっとiPS細胞や山中さんについて知りたい人にお薦めなのが『「大発見」の思考法』(文春新書)です。この本はノーベル物理学賞受賞者の益川敏英先生との共著。日本が誇る知性による「世紀のノーベル賞対談本」です。 そう聞くとなんだか難しそうですが、読者の方々からは「文句なしの面白さ」「読むだけで脳が興奮する!」との声が続々届いています。TVで見る顔とは違う、リラックスした普段のお茶目な山中さんが見られます。対談当日も、超多忙の身にもかかわらず「お忙しいところ、ありがとうございます」と謙虚な姿勢と誠実な人柄に、みなすっかり山中ファンになってしまいました。「世紀の大発見」はどのようにして生まれるのか? 日常の勉強法から脳の不思議さ、奥深さ、生命の神秘まで、世界の頂点を極めた科学者同士だからこそ、ここまで語り尽くすことができました。

アルコールランプでこたつが火の海 実験に熱中した子ども時代

 東大阪市でミシンの部品を作る工場を営む一家に生まれた山中さん。工場は「父の頃には工場とも呼べないような小さなもの」で、母親も家業を手伝っていたため「ほったらかしで育った」(山中さん)といいます。生涯で塾に通ったのは小学生のときに1カ月だけ。国語が苦手で、今も研究所のスタッフから「先生、漢字の書き順がおかしいです」と指摘されることがあるそうです。

山中 家は工場の隣にあって、幼い頃からいつも機械に囲まれて生活していました。理科の実験も大好きで、子供向けの科学雑誌をよく買ってもらっていました。何年生の時だったか忘れましたけど、家のこたつでアルコールランプの実験を夢中でやっているうちにランプをひっくり返してしまい、こたつの上が火の海になって、母から大目玉を喰らったことがあります(笑)。

 そんな好奇心は今も健在。山中さんは、科学者に必要なのは、「びっくりできる感受性」だと言います。予想外の実験結果が出たときに、がっかりせずにそれを心から面白がれるかどうか、「むしろ予想通りではないところに、とても面白いことが潜んでいるのが科学」だと語る山中さんは、普段から学生にこんな声をかけているそうです。

「野球では打率3割は大打者だけど、研究では仮説の1割が的中すればたいしたもんや」「ごちゃごちゃ考えんと実験やってみい」

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「大発見」の思考法

山中伸弥・著 益川敏英・著

定価:872円(税込) 発売日:2011年01月20日

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生命の未来を変えた男

NHKスペシャル取材班・編著

定価:1500円(税込) 発売日:2011年08月27日

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