同じく、僕が長期的に影響を受けている本の2冊目は、『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』です。リーダーシップのスタイルが変わって、アートの領域というか、数字だけでは表せないところに価値を見いだして、それを追求していくというところに共感し、経営者として最も影響を受けました。
単純に安くていいものをつくれば売れる時代から、付加価値を生み出す時代に変わってきたので、それを具現化していくリーダーシップが重要なのかなというのが、自分なりの理解です。
リーダーシップに決まったかたちはありませんが、自分本位だとうまくいきません。ここはリーダーシップを発揮するけど、ここは任せるというのを、相手によって、状況によって、かなり細かく分けて考えないといけません。
たとえば、会社の調子がいいときと、うまくいっていないときでは、同じリーダーでも果たす役割が違います。潰れそうなときは、役員に対してはこう接するけど、部長に対しては違うやり方で接するとか、なるべく多くの引き出しを持っているほうがいい。リーダーはそういうパターンをどれだけたくさん持っているかが重要だと思います。
本を読むときも、特定の誰かに肩入れするというよりも、さまざまなパターンを取り入れたいので、このシーンではこの人のやり方、別のシーンではあの人のやり方というように、いいとこ取りをしています。その意味でも、『ビジョナリーカンパニー』シリーズは役に立ちます。
最新刊の『ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる』には、少し狂気に近いような経営者の事例が挙げられています。最近はやりの人工知能(AI)やビッグデータは、アルゴリズムの世界です。大量のデータを分析して、一番賢い選択肢を選ぶ。
しかし、経営者は時として、アルゴリズムではとらえきれない感覚的な判断を優先します。論理的に突き詰めていくと、絶対にそれは選ばないというものを、あえて選ぶときがある。同じことを賢く、賢くやっていくと、だんだんコストが下がってパターン化されるけれども、それだけでは飽きられてしまいます。
次の飛躍をもたらすのは、ある種の狂気です。誰も理解できないし、説明も分析もできないけれど、これだと思ったら信じてやり抜く。そういうパターンもあるということをこの本は教えてくれたのです。