単行本刊行時の記事です。
昭和四十二年に東京・新橋に開店した「京味」は、文壇、芸術、政財界と幅広い顧客に愛されてきた京料理の名店。京都で生まれ育ち、京の名割烹(かっぽう)で修業を積んだ西健一郎氏が開店以来四十二年間、伝統の京料理に独自の発想を加えながら「京味」の世界を築いてきた。
顧客のひとりであり、公私ともに四十余年の付き合いという平岩弓枝氏との料理談義とともに、「京味」の十二か月の献立とおせち料理の計百品余を一冊にまとめた『「京味」の十二か月』がこのほど刊行。日本料理の奥の深さと、現代の料理のありようを考えさせる内容になっている。
顧客のひとりであり、公私ともに四十余年の付き合いという平岩弓枝氏との料理談義とともに、「京味」の十二か月の献立とおせち料理の計百品余を一冊にまとめた『「京味」の十二か月』がこのほど刊行。日本料理の奥の深さと、現代の料理のありようを考えさせる内容になっている。
──平岩さんは四十余年間、「京味」さんに通い、西さんの料理とその歴史をずっと見てこられたのですね。
西 先生に初めてお会いしたときのことは、今でもよく覚えています。これからも引き続きお顔を見せていただけるとうれしいなあと、それはもう神経を集中させて一生懸命、お料理を作りました。以来、ずっとご贔屓(ひいき)にしていただいて、気が付けば四十余年。先生は私の若い頃のこともよくご存じで、私自身の苦楽も、何から何までご理解いただいているんじゃないかと思います。
そんなわけで、今回の対談でも楽しくお話しすることができました。料理のことだけでなく、私の性格も、私の考えていることなども、よーくわかってくださっていますから。また先生には、随所で料理の背景にある日本の歴史や宮中のしきたりなどについてお話しくださり、私にとっても勉強になりました。私たち料理の世界で働いている者にとってはもちろん、広く日本人にとって、行事や食文化の成り立ちを知る貴重なお話が盛り込まれていると思います。
──平岩さんは毎月の対談の中で、「四十年間も食べてきたのに、西さんの料理にはまだまだ自分の知らないものがたくさんある」と、驚いていらっしゃいましたね。