調査の仕事に関してはすばらしく有能だが、次から次へと不運な出来事が襲いかかる、クールで頑固な女探偵・葉村晶。『依頼人は死んだ』『悪いうさぎ』で活躍し、熱いファンを獲得した彼女が、13年ぶりの新作長編『さよならの手口』で還ってきた!
――このシリーズの魅力は、何と言っても主人公・葉村晶のキャラクターにあると思います。
ありがとうございます。最初に葉村晶が登場したのは『プレゼント』(中公文庫)ですが、自分に職業探偵が書けるという自信がなく、その頃はまだ普通っぽいフリーターの女の子でした。キャラとして立ち上がって来たのは、『依頼人は死んだ』ですね。仕事には手加減をせず、口が悪くて、誰にでも耳に痛い発言をしてしまう晶ですが、4人姉妹の末っ子で、親きょうだいとは絶縁状態。自殺している3番目のお姉さんが「姫」的な存在で、晶はすっかりオマケ扱いで育ち、ああいうニヒルすぎる性格になってしまいました。
――連作短編集『依頼人は死んだ』に続く、長編『悪いうさぎ』では、家出中の女子高生を連れ戻すという仕事から、いくつもの試練が晶に降りかかります。肉体的、精神的にもギリギリのところまで追いつめられながらへこたれない葉村晶という人物の魅力が確固たるものになった『悪いうさぎ』は推理作家協会賞長編賞の候補にもなり、続編を望む声も多かったのですが、新作刊行までに13年もの年月がかかってしまいました。
本当にお待たせしてすみません(笑)。えーと、言い訳をさせていただくと、書いていなかったわけではないんです。最初はテレビ局を舞台にしたプロットを考えていました。でも、どうしても自分で納得がいかなくて。『悪いうさぎ』の頃の晶は30代で、当時の自分と考え方や言葉がシンクロしていたんですが、だんだん自分も年をとって、30代の晶を描くのにずれが出てきました。あと、晶の家族や恋愛についても読みたいという要請があり、盛り込もうと努力したんですが、うまくいかない。そんな中で震災が起きて、やはりこんな大きな問題をなかったかのようには扱えないと、また書き直し、震災直後に200枚近くまで書きました。結局この200枚も自分で没にしてしまったのですが、震災で住んでいたアパートが壊れてシェアハウスに引越したとか、長谷川探偵事務所が潰れてしまったといった設定は本作『さよならの手口』に生かされています。
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