インタビューほか

彼女の友情が私を食べ尽くす──「女子会」を内側と外側から考える

「本の話」編集部

『ナイルパーチの女子会』 (柚木麻子 著)

三十の同い年、そして「同性の友達がいない」ことも共通したことで急速に親しくなったふたりの女性。しかしその後ふたりの関係は思いもよらぬ方向へ……。これまでもさまざまな人間関係を描いてきた柚木麻子さんが新作『ナイルパーチの女子会』で「女同士の関係の極北」を描いた背景を伺います。

――そのことに対して敵意を抱かれても困ってしまいますね。

柚木 はい。でも昔は「女子会サイコー!」というノリだけだったのですが、最近は楽しい最中でもふっとさびしくなる時があったり、自分たちに冷たい視線を向ける人たちがいるのはなぜか、ということも考えるようになりました。それは少し年を取って、若干の客観性を持つようになったからかもしれません。

――もうひとりの主人公、専業主婦の翔子も「女子会」的なこととは無縁の存在です。でも翔子は栄利子との関係の変化がきっかけで、それまでゆるいノリでやっていたブログに異様に力を注ぎ始めます。それは栄利子とは違った形で、強く友達を求めることの現われのようにも見えました。

 

柚木 栄利子や翔子に限らず、同調圧力の強い「親しい友達がたくさんいたほうがよい」という価値観を持つ人は多いと思います。でもその価値観は実はブログの人気順位のように簡単に数値化が可能で、自分でも意識しないまま他人と競ったり闘ったりさせられていることがあります。そんな価値観には無理に従わないで、そこから降りたり、いっそ背を向けてもよいのでは――ということに作品を書きながら気づきました。

 ひとりのことを「思う」だけでも友達は友達ではないか――親しい友達同士が助け合う『あまからカルテット』のような作品を書いておいていうのも何ですが(笑)、どちらも真実だと私は思います。

――タイトルにある「ナイルパーチ」は、一つの生態系を壊すこともある凶暴な性質の食用の淡水魚です。作中ではその象徴する意味が絶妙に変化してゆき、栄利子と翔子の関係性も暗示していますね。

柚木 ナイルパーチのことはあるドキュメンタリー映画を見て知ったのですが、調べたり取材をするうちに、凶暴性だけではない、さまざまな性質や事情を知りました。今回の作品の結末は自分でも思いもよらぬものになりましたが、この魚の影響は少なくありませんでした。凶暴な性質といわれるけど、それは人間が提供した環境のせいであって、ナイルパーチ自体に罪はありません。これが栄利子たちの女友達をめぐる人間関係をどのように照射するのか……作品からそんなところも読み取っていただけたら嬉しいですね。

装画・菅野裕美

ナイルパーチの女子会
柚木麻子・著

定価:本体1,500円+税 発売日:2015年03月28日

詳しい内容はこちら

ナイルパーチの女子会柚木麻子

定価:本体750円+税発売日:2018年02月09日


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