- 2014.12.29
- 書評
究極の麻薬「デジタル・ヘロイン」
その泥沼から脱するために
文:岡田 尊司 (医学博士・岡田クリニック(心療内科)院長)
『インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで』 (岡田尊司 著)
21世紀の文明を特徴づけるのは、何と言っても、通信情報ネットワークの驚異的な発達と情報革命だ。誰もが掌の上に、通信ネットワークだけでなく、コンピューター、テレビ、図書館、ショッピングモール、劇場、カジノ、ゲームセンター、ストリップ小屋、飾り窓……それこそ無数のあらゆる刺激装置をもつ時代に突入したのだ。その気になれば、新しい人格を手に入れたり、戦闘に参加したり、CIAも顔負けの困難なミッションを遂行したり、年齢や性別を偽って愛を語ったり、別の人生を生きることもできる。しかも年齢制限なしで、小学生から老人まで、どこからでも24時間アクセスOKだ。
もう当たり前すぎて、ろくろく意識されることもないが、これは、考えてみれば途方もない事態である。どんな麻薬も、これほど多彩で刺激的な精神作用を有するものはない。どんな麻薬も、ネットやスマホが提供する刺激に比べたら、単調で退屈な代物だと言わざるを得ない。それは、かつて存在しなかったレベルの興奮と利便性をもたらすと同時に、究極の麻薬と隣り合わせで暮す状況に、我々を否応なく投げ入れる。年端のいかない子どもも含めてだ。
何かの拍子に、足を滑らせてしまえば、そこは麻薬中毒と変わらない依存の泥沼だ。気がついたら、気力と意思を奪われたデジタル・ジャンキーが出来あがり、学業のドロップアウト、失職、ひきこもりへと真っ逆さまだ。そこまでいかなくても、日常生活や社会生活に何らかの支障を生じているケースはそこらじゅうに溢れている。インターネット依存と呼ばれる人たちだけで、500万人以上、そのうち、もっともコアな依存症であるインターネット・ゲーム依存症が半数近くを占めると推定される。そこにスマホ依存が加わり、最新の報告では、20代男性の約2割に依存症が疑われるという。
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