江戸通りは、浅草へ向かい隅田川に並行して走る現在の国道6号線で、この通りを背骨として江戸の町が組みあがった。青山さんが遊びにでかける町も、この江戸通りに沿って神田や浅草、千住へと移っていった。
撮影で訪ねた浅草ビューホテル脇のショットバー・バーリィもそうして見つけた店の一つ。開店から28年を迎える老舗で、スコッチのネゴシアン物が揃う、クラシカルなバーだ。
「初代マスターの佐野繁雄さんが横浜・本牧の出身でね。米軍の将校クラブで修業したんだけど、いい男だからもてまくって。でも、その自慢話を聴くのが心地よいという奇特な方で、開店したての頃から通っていました」
バーリィでは南千住の「尾花」から取り寄せたという鰻の肝や、佐野さんが作りだしたラムベースのホットカクテル“佐野グロッグ”でもてなしを受けた。
翌日は選考委員の宮城谷昌光さんとの受賞記念対談へ(オール讀物3月号掲載)。この日以降も、新聞やテレビの取材、横浜や大阪などサイン会のための全国行脚が続いた。
「早く小説の執筆モードに戻りたいけれど、今、メディアに出るのも大切な役目。ただ、けっこう顔を覚えられてしまって、健康維持のための近所のスーパーマーケット・ウォーキングがしづらくなったのが悩みですかね」
こちらもおすすめ