1月19日に決定した芥川賞・直木賞。世間の耳目を集める文学賞を受賞した作家は、どんな日々を送っているのか。「オール讀物」3月号では直木賞を受賞した青山文平さんを特集するが、本誌に先立ち、密着した編集者が取材余話を披露する。
味わいのある大人の文章が評価され直木賞を受賞した青山文平さん。隠居の男が還暦を前に女をめとるまでの揺らぎを描く表題作の「つまをめとらば」など、受賞作では江戸中後期の男女模様を描いている。
オール讀物の直木賞受賞記念ページでは、著者にゆかりのある土地で撮影を行うのが恒例企画。青山さんとの打ち合わせでは、生まれ育った横浜の他に日本橋や浅草の地名があがった。
「新卒で勤めた会社が日本橋にある経済系の出版社でした。育ったのが横浜で、大学も高田馬場にある早稲田だったので、それまで東京といえば新宿や渋谷といった西側ばかり。それが日本橋、しかも常盤橋の袂に勤めたことで、東側にも窓が開いたのです。神田須田町の『まつや』や浅草の『並木薮』で蕎麦屋酒を覚えたりして、だんだんと江戸の東京に馴染んでいった。時には、みんなで三越のデパ地下で尾頭付きの鯛とお赤飯を買って屋上で食べたりね。江戸が胎胚していく江戸通りを間近に感じる、贅沢な会社員生活でした」
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