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私がドラマ化するまで、誰も企画しないで!<br />4年を経て富司純子主演でついに完成

私がドラマ化するまで、誰も企画しないで!
4年を経て富司純子主演でついに完成

文:藤並 英樹 (NHKドラマ番組部ディレクター)

『萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ』 (吉永南央 著)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 私自身、2011年に息子を授かり、父親となり、子を持つ親の目線が新たに加わりました。幼い時にある事情から息子と別れて暮らし、そしてその子を不慮の事故で亡くしてしまったお草さんの境遇。亡くした子と重なり合わせるかのように、自らの手で救おうとした幼い少年の命。子を持つ親として共感させられ、その描写や悔いの思いには涙が誘われました。

「長いことあの世で待っている息子が見てるの(略)だから中途半端はできない」

お草の過去につながるキーマン・松井(橋爪功)は、ドラマのオリジナルキャラクター

 これまで自分のことだけを考えていた人生から、我が子のことを強く考え、子の鑑になれるような父親になろうと、お草さんから教わったような気がします。

 仕事もプライベートも大きな転機だったこの年に出会った“女優”と“原作”。いつか富司純子さん主演で「紅雲町珈琲屋こよみ」をテレビドラマ化したい! という気持ちは高まりました。

 しかし現実はそんなに甘くはありません。私が在籍していた大阪放送局は主に関西、西日本の題材を扱う(ことの多い)放送局であり、「紅雲町」のある北関東を舞台にしたドラマはなかなか実現が難しい。そしてなにより私自身が“ひよっこ”で、企画を通す力も演出する力も未熟でした。そこで私は「お願い! 誰も企画しないで! この素敵な物語の存在に気がつかないで!」とおおよそ原作のファンとは思えない“裏切り”を心に抱きつつ、いつか自分がこのドラマを企画演出できるよう、大阪での精進の日々を過ごしておりました。

 その思いが実を結んだのか、その後いくつかのドラマの演出を経験し、一昨年、東京のドラマ番組部への異動を経て、ようやく企画を出せる“土台”が自分に身につきました。いわば“初恋”の人に告白できる自信がついた……そんな感じでした。

“いつかお草さんと向き合える男になりたい”その思いが私を育ててくれたのかもしれません。物語に向き合う読み手の心と人生を刺激する――その魅力が「紅雲町珈琲屋こよみ」にはあるのだと思います。是非、私が恋したお草さんの魅力にみなさんも触れていただければと思います。


 特集ドラマ「紅雲町珈琲屋こよみ」は4月29日(水)夜7時30分から、NHK総合テレビで放送予定。脚本:相沢友子 出演:富司純子 吉沢悠 秋元才加 橋爪功 ほか
http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/8000/194665.html

萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永南央・著

定価:本体590円+税 発売日:2011年04月08日

詳しい内容はこちら

その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永南央・著

定価:本体550円+税 発売日:2012年11月09日

詳しい内容はこちら

名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永南央・著

定価:本体550円+税 発売日:2014年07月10日

詳しい内容はこちら

糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永南央・著

定価:本体1,500円+税 発売日:2014年08月25日

詳しい内容はこちら

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