【百代桜(ももよざくら)】
四角く整えた白餡を、小麦粉で作った種を薄く焼いた皮で、結び目のない風呂敷包のように包む。桜の咲き具合とともに、紅色の羊羹の花弁が増えていく。
【茂市の煉羊羹(もいちのねりようかん)】
唐物の三盆白を使い、品のいい甘味の、穏やかで淡い小豆色をした煉羊羹。普通の煉羊羹よりも柔らかく、喉越しがいい。「藍千堂の煉羊羹」とは別に売り出されており、さっぱりとしたこの羊羹を目当てにした客も多い。
【金平糖(こんぺいとう)】
珍しい南蛮菓子を江戸の子どもたちに食べさせたいという晴太郎の思いから、七夕の時期にだけ格安で売る。
【四文柏餅(よんもんかしわもち)】
普通の柏餅は讃岐産の三盆白を使った漉餡で、上恩方村の柏の葉を使用。四文柏餅は普通のものより小ぶりで、黒砂糖を使い、小豆と米の質を一段だけ落としている。味噌餡と潰し餡の二種。値段が安いため、普通の柏餅と食べ比べられるのが名物。
【金鍔(きんつば)】
浅い筒の形に丸めた小豆餡を、できるかぎり薄くした上新粉の皮で包み、銅板の上でこんがり焼く。餡の出来栄えを確かめるために、毎日八つ時につくる。焼き立てを食べにやってくるのは岡丈五郎の“日課”に。
焼きたての香ばしいところを頬張るのが格別で、熱々の皮の表はさくっと軽く、餡に接した内側はしっとりとして、米の皮独特の粘りがある。
……
「温ったけえ」
嬉しそうに呟いてがぶりと一口、目尻がふうっと、下がる。(本文より)
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