- 2018.09.11
- 書評
過剰な責任と違法な脅しで追い詰められる若者たち
文:今野晴貴 (NPO法人POSSE代表)
『西一番街ブラックバイト』(石田衣良 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
この職場では、数店舗を束ねる店長がほとんど現場に姿を現さず、たまに姿を現すと「俺は昔ヤンキーだった」などとちらつかせて実際に「昔の仲間」をこれ見よがしに連れてきた。
学生アルバイトが休みの相談をすると、学生の左耳が数週間難聴気味になるほど、一時間にわたる怒号と説教を浴びせかけたという。仕事のミスなどで見せしめに殴られている先輩のアルバイトをみたこともあり、この学生アルバイトは自分が休んだり辞めたりすることが出来なくなってしまった。
ブラックバイトが広がった理由
これらの事例ほど過酷なものは珍しいものの、先に見た特徴を持つブラックバイトの実態は、外食業、小売店、個別指導塾を中心に広がっている。では、なぜ、急激にアルバイトはブラック化してしまったのだろうか。
ブラックバイトが広がった要因は(1)サービス業が過当競争の中で、時給の安い学生に責任の重い仕事を求めるようになったこと、(2)大学生の親の収入が減少し、日本の大学の授業料が高く、奨学金制度も未整備であること、(3)正社員になれずにアルバイトで暮らす若者が増加したことが挙げられる。
特に重要なのは(1)で、厳しい売上目標やノルマを定めるケースや、学生やフリーターのみで店舗の大半を運営するなど、経営戦略にアルバイトを組み込む大企業が現れている。店舗の運営は極端にマニュアル化されているため、正社員の店長を雇う必要もない。学生やフリーターだけでマニュアル労働をこなさせることができれば、大幅に人件費削減ができる。
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