「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)」のエースとして長く活躍した澤穂希さん。2011年のW杯では日本代表を世界の頂点へと導き、ロンドン五輪、15年W杯でも銀メダルを獲得した。結婚後は、2015年に現役を引退し、現在は1歳9か月の長女のママとして子育ての真っ最中。現役時代、遠征の際には必ず、東野圭吾の小説をカバンに入れていたという澤さんに、新作『沈黙のパレード』を読んでもらったうえで、「マイ・ベスト・ガリレオ」を訊いた。
現役時代、東野作品の読みすぎで、寝不足に!?
━━東野作品を読むようになったきっかけを教えていただけますか?
「かれこれ、十数年前だったと思うんです。なでしこの合宿で、チームメートたちが『東野圭吾の“ここ”が面白いよね!』って話していて、すごく気になったんです。『白夜行』『幻夜』から読み始めて、そこから東野作品に夢中になりました。
代表合宿に行くカバンには、常に3、4冊は東野さんの小説を入れていました。現役時代は午前の練習を終えると、休息として昼寝をするのですが、小説を読み始めてしまうと、昼寝が出来なくて困りました。アスリートとしては、睡眠をきっちりとって、体を休めることも大切ですから、今日はここまでしか読まない!と強い意志で止めていました(笑)。私も周りの選手たちに勧めたりして、なでしこ内で東野さんは大人気でした」
想像も及ばないトリックに驚いた。
━━澤さんの「マイ・ベスト・ガリレオ」は何でしょうか?
「すごく難しい質問で、選べないですよー(笑)。『容疑者Xの献身』の装丁は、真っ黒に真っ赤なバラ一つ。すごく印象的で今も自宅に持っています。シリーズ初期の『探偵ガリレオ』や『予知夢』では、想像も及ばないトリックに驚きました。こんな方法で、人が殺せるのか!って。そのあとの作品から、少しずつ湯川先生が、人間くさくなっていくところも良いですよね。本当は事件にかかわるつもりはないのに、草薙や内海薫との人間関係もあって、捜査に協力していく。『真夏の方程式』は、一転、明るい少年とガリレオ先生の物語で好きでした」
子供を寝かしつけて、読み始めたら一気に110ページも!
━━最新作、『沈黙のパレード』も読んでいただいたうえでの、ベストはどれに?
「『沈黙のパレード』は、手元に届いた瞬間から読むのが楽しみでなりませんでした。ただ、育児をしていると、昼間はなかなか時間が取れなくて……。子供を寝かしつけて、すぐに読み始めたのですが、気が付いたら一気に110ぺージでした。
母になった身としては、被害者・並木佐織ちゃんの両親の気持ちが痛いほどわかりました。両親だけじゃなくて、佐織ちゃんのことを好きだった街の人たちもいるわけです。愛する存在を殺された人々の復讐、という部分は読みごたえがありました。
私もこの菊野商店街の住民なら、佐織ちゃんの人生を奪った相手に対して、当然、憎しみの感情を持つと思いますが、いざ『復讐』となると、どこまでできるのかなって。蓮沼寛一という悪人に復讐をしたとしても、佐織ちゃんはもどってこない。もし両親が、復讐に加担してしまったら、残された妹もいる……。そのあたりの描かれ方も絶妙だったと思います」
草薙や内海薫が優秀でも、湯川先生は次元が違った。
━━少女殺害事件の容疑者として浮上する男は、かつて草薙が担当した事件で無罪となった男で、そうとうの「ワル」でした。
「蓮沼寛一。悪人でしたね。ですが、悪くなってしまった理由が伝わってきました。子供は親の背中をみて育つといいます。憧れるか、反面教師とするか、両方あると思いますが、今回の描かれ方は、ものすごくしっくりきました。
草薙や内海薫は今作でも優秀でしたが、目の前のことを一つ一つ丁寧につぶしていくのが刑事ですよね。たとえ話としてですが、パズルをするときって、普通ならば、次にはめるピースを探すと思うんですが、湯川先生は見ている次元が圧倒的に違った。今作のガリレオは、“すごい”を通り越していました。久しぶりに、ガリレオの新作が読めた感激も含めて、私は『沈黙のパレード』に投票します」
澤さんのキクノンは、足がキュート!
━━今回、小説の舞台は、架空の町・菊野市でした。秋祭りで行われる「キクノ・ストーリー・パレード」に登場する、ゆるキャラ「キクノン」を募集する企画を始めるにあたって、澤さんに、キクノンを描いてきていただきました!
「私、絵心がないんですが、子供に見せたら泣いてしまうんじゃないか、って心配なんですが…(笑)」
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