- 2018.11.27
- インタビュー・対談
宮部みゆき 『昨日がなければ明日もない』&『希望荘』刊行記念インタビュー #2
「オール讀物」編集部
シリーズ累計300万部突破!
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
──広報誌「あおぞら」編集部の人というのはあくまでも杉村の仮の姿だった。それは、最初の頃から考えていたんですね。
宮部 はい。杉村が探偵になるまでは、最低、長編二作は、必要だと思っていたんですけど、まさか三作目が、文庫で上下巻になるとは……(笑)。あと、実は、探偵になったときに、杉村の年齢を若返らせているんですよ。ぎりぎり三十代で探偵にならせようと思って。『希望荘』や『昨日がなければ明日もない』から読み始めた方は、まず純粋な私立探偵ものとして愉しんでいただき、もし杉村の過去が気になった方は、初期の三部作を読んで、「杉村はこういう経験をしているのか」とか。このシリーズは、そういう読み方もできると思います。
──前の三作のどこに伏線が張られているのか、考えながら前作を読み返すのも楽しそうですね。
宮部 まあ、たまたま使えるから書いているということも、結構あるんですけどね(笑)。本当に何気なく書いておいたものが、「あ、ここつながるな」って。でも、読み直して、伏線を拾ってくるということはしないんです。たとえば、『希望荘』でも、前に、杉村のお姉さんのことを、どう書いたかとか、本当に必要なところしか読み直してないんですよ。
──『希望荘』を、中編四編で構成しようと考えたのは、なぜだったんですか。
宮部 『昨日がなければ明日もない』にも繋がるんですが、杉村に、探偵としてある程度の場数を踏ませたいと思ったんです。彼が、いきなり原尞さんのハードボイルド小説『そして夜は甦る』みたいな難事件に当たっても、解決できるわけがないですから。最初から四〇〇メートル個人メドレーは泳げないので、はじめはともかく五〇メートルの自由形と平泳ぎとバタフライをちゃんと泳げるようにさせないといけない。新米探偵だけど、仕事を貰う「オフィス蛎殻」という大きい探偵事務所がバックアップしてくれて、ネットの魔法使い「木田ちゃん」が何でも調べてくれる。恵まれていますよね。
──杉村の事務所では、着手金が破格の五千円です。安い値段で受けるということは、町の探偵としては、とても頼みやすいと思います。
宮部 たとえば「最初に、十万お預かりします」というと、それだけで帰っちゃうお客さんもいる。最初は五千円でいいですよ、となれば、それだけ依頼人のバリエーションは増えますよね。ただ、それも、「オフィス蛎殻」の仕事があるからできることなんです。いままでは、今多コンツェルンがバックアップしてくれたのが、今度は「オフィス蛎殻」と、大家さんである下町の地元のお金持ち・竹中家が負担してくれている(笑)。
こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 11月号
2018年11月号 / 10月22日発売 / 定価980円(本体907円)
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