- 2018.11.27
- インタビュー・対談
宮部みゆき 『昨日がなければ明日もない』&『希望荘』刊行記念インタビュー #2
「オール讀物」編集部
シリーズ累計300万部突破!
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
──『希望荘』の「二重身」では、二〇一一年の東日本大震災が描かれ、それが、大きいテーマとなっています。実は、このシリーズは、前作が終わってから、だいたい三~四年ごとに書かれていますね。
宮部 何となくそうなっていますよね(笑)。
──ある程度、時代の雰囲気や空気を、このシリーズで書き残しておきたいという気持ちがあるのでしょうか。
宮部 たしかに、そういう面はあるかもしれません。だから、杉村の物語をいったんリセットして、『希望荘』を書き始める時に、どうしても、震災の当日のことを書いておきたくて、二〇一一年をスタートにしたんです。NHKのラジオのアナウンサーが、いかに冷静だったかとか、ご近所でも皆さんが助け合っていたことも書いておきたかった。薬局の調剤カウンターの下にお客さんと薬剤師さんが一緒に隠れていたなどというすごく些細なことは、公的な記録にはたぶん残らないので。
なぜ現在から始めないんだと、読者の方からもお問い合わせをいただきますが、作り話とはいえ、現代の市井を舞台にした小説なので、これから先の未来の話は書くのを控えようということもあります。
「しっかり頑張りなさい、探偵」
──十一月に発売される『昨日がなければ明日もない』について、お話を伺わせてください。「絶対零度」、これは宮部作品史上屈指の後味の悪さかもしれません。テーマは、「体育会系の同調圧力」で、先輩に命令されると断れないという、ある意味、悪しき日本型組織を象徴する話でした。
宮部 嫌な事件ですよね。昔からある問題で、正しくは「間違った体育会系」。以前、『楽園』を作ってくれた体育会出身の編集さんに、私も「日本の組織によくある体育会系的な感覚」が苦手だという話をしたら、「先輩の言うことに逆らえないとか、しごきやいじめが当たり前というのは、正しい体育会系じゃないんですよ」と言われて、なるほどな、と思ったので、いつか書きたかった。
──執筆時期は、昨年の夏でしたが、その後、日大のアメフト部の問題が発覚しました。
宮部 これは、本当に偶然なんです。たまたまタイミングが合っただけなんですが、そういうことって、私に限らずたまにあるんです。
こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 11月号
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