- 2018.11.27
- インタビュー・対談
宮部みゆき 『昨日がなければ明日もない』&『希望荘』刊行記念インタビュー #2
「オール讀物」編集部
シリーズ累計300万部突破!
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
──物語は、結婚した娘が入院して、実家の両親からは、連絡が取れなくなるというところから始まります。着想のきっかけは?
宮部 「アルバート・サムスン」もので、一番好きな長編が『沈黙のセールスマン』なんです。会社で事故に遭って怪我をした弟が入院しているけど、いまだに面会させてもらえません、っていうお姉さんの依頼を受けるところから始まる。この、家族が入院したのに会えない、というネタで一度は書いてみたかった。ぶっちゃけてしまうと、アルバート・サムスンが扱っている事件は、今後、一通り私なりに料理して全部書きたいと思っています。
──装丁にしても、主人公の造形にしても、とても強いオマージュを感じているんですね。
宮部 ともかく、あのシリーズへの憧れです(笑)。
──「華燭」は、またガラッと変わって、近所の女子中学生の付き添いで、竹中夫人といっしょに結婚式に出ることになった杉村が、式場で意外な事件に遭遇するという、とても身近な話でした。
宮部 最近出席した結婚式で、オードブルにテリーヌとパンが出てきたっきり、小一時間、次の料理が出てこなかったことがあって……。でもいったん出て来たら、今度は、わんこそばのような勢いでサーブされました。オープンしたての結婚式場で、料理以外は、ほんとうに素晴らしかったんです。新郎新婦からは、ものすごく謝られたんですが、「小説のネタになったから大丈夫よ」って(笑)。
──それは作家ならではのお話ですね。
宮部 転んでもタダで起きません(笑)。
──杉村がふだん扱っている事件は、こんな感じじゃないかという、親近感を覚える物語でした。
宮部 連続ドラマでも、ときどき、ちょっと息抜きできるサイドエピソードの回がありますよね。たとえば、『太陽にほえろ!』だと、「七曲署一係・その一日」みたいな。そういう話として仕立てられるかなと思いました。杉村も、桃子よりは少しお姉さんの女の子の引率をするというので、ちょっとしみじみとしている。杉田さんにも、挿絵できりっとしたかわいい子を描いてもらえてとてもうれしかった(ページ内掲載)。
──表題作の「昨日がなければ明日もない」では、いわゆるモンスターペアレントが登場します。自分の許で育てられず手放した息子が預け先で交通事故にあったので、損害賠償請求をしたいと、着手金が五千円と知った、竹中家の娘さんの元同級生の母親が杉村に依頼してきます。
こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 11月号
2018年11月号 / 10月22日発売 / 定価980円(本体907円)
詳しくはこちら>>