あのころ、知りあいのだれもがなにかしらの小さなウソをついて暮らしていた。そういう年頃だった。たいてい、ほんのちょっと自分を印象づけたくて脚色する、たわいのないウソだ。飼ってもいないアビシニアンの自慢をしてみたり、実在しないパリ暮らしの叔母のみやげものを見せびらかしたり、クルミぐらいの大きさなのに重さが一キログラムもある石を持っていると云ってみたり。
小学校時代から、作文を書くたびにちょっとしたウソをまぎれこませるうち、いつのまにか身につけてしまう習性だ。
示唆的な文章だと思う。小学生のつく「小さなウソ」「たわいのないウソ」は、かわいい。ウソだということがすぐに分かるし、もしも本当のことだと信じたとしても、なんらかの被害を被ることはない、罪のないウソである。そして、そんなウソの一つくらいは、誰しもついたことがあるのではないだろうか。
大人になっても、ウソをつく人はいる。それが私利私欲のためならば許せないが、小学生の脚色の延長線上のような、罪のない、そして遊び心満載のウソならば、歓迎したいほどである。
プレゼント
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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