内田俊明さん(八重洲ブックセンター本店)
これは素晴らしい。まさに会心の作でした。お末→お三輪という小川が、半二の人生の大河に寄りそって流れているような構成がまさに大島調で、実在の歴史上の人物を描いてもこれを悠々となしえる非凡さに感服です。
時制にとらわれず自在に描くという、本来は大島文体の長所であるところが、実在の人物たちの評伝であるがゆえ、描かれているのがどの時点なのかというところが、あいまいに感じられてしまうきらいは少しあるかなとは思いましたが、それを気にしない読み手が多いことを望みます。
中川和彦さん(スタンダードブックス)
舞台が道頓堀と当店からは目と鼻の先で、久左衛門町等馴染みの地名も数多く登場し、とても楽しく拝読いたしました。(道頓堀、今は見る影もありませんが……)著者は名古屋在住なのに、大阪弁が活き活きと描かれていて驚きますとともに地元の人間にはとてもうれしい限りです。
文楽は何度か鑑賞いたしましたが、この本にもありますように私も回数で言えば歌舞伎に軍配が上がります。この本をきっかけに大阪発祥の文楽が地元大阪で見直されるよう願っております。発売が待ち遠しいです。
江藤宏樹さん(広島蔦屋書店)
大島真寿美がここ最近の作品で言い続けていたことが、ここで完璧に芯を食った。
凄いことが書かれている。
圧倒的だ。
人形浄瑠璃作家の半二の生涯を描きながら、物語を書くということはどういうことなのかをその闇を含め赤裸々に描いていく。
浄瑠璃を書く半二は、周りの様々な人間を巻き込みながら、その創作を続けていく。
その中で、浄瑠璃にとりつかれて落ちていくもの、成り上がっていくもの、創作の闇に飲み込まれるものも出てくる。
脱落していく者を横目で見ながら、それでも半二は浄瑠璃を書くことしかできない。
書くことが生きていくこと。
書き続けることで死ぬかもしれない、けれども、書き続けなければ生きていけない。
物語はどこから降りてくるのか、なぜ人は物語を綴るのか、物語る者がとらわれる闇とはなにか、物語を産む喜びとは。
それらの答えはこの物語を読むことで見えてくるはずだ。
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『皇后は闘うことにした』林真理子・著
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