- 2019.08.27
- 書評
すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。
文:石井妙子 (ノンフィクション作家)
『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)
加計理事長がやってきたことも、つまりはそういうことであった。
関東進出が長年の夢であった彼は政治力を駆使し、安倍の力も借りて、過疎化に悩む千葉県銚子市にまず千葉理科大学(現・千葉科学大学)を新設する。だが、肝心の学生が集まらない。そこで留学生を求めて海外へと手を広げていくのであるが、これを後押ししたのもまた、安倍首相夫妻だった。首相の応援が効いて、加計学園はフィリピン最大の日本語学校と業務提携することに成功している。
さらには、ミャンマーへも進出するが、ここでは安倍昭恵夫人がより大きな役割を担ったと、本書に詳しい。
昭恵夫人は、森永製菓の創業者一族という恵まれた家庭に生まれ、幼稚園から聖心女子学院に通ったが、勉強もスポーツも苦手な劣等生で系列の四年制大学には進学できず、人と自分を比べては落ち込んでいたという。内向的で政治家の妻になってからも人前に出ることが苦手だった、とも。これは私自身が彼女にインタビューをした際、本人から直接、聞いたことである。
ところが、彼女は夫が総理になり、首相夫人を経験してから大きく変貌を遂げる。自分に自信を持つようになり、自分に目覚めていったのだ。自分が動けば周囲を変えることができると感じるようになり、「私を利用してもらいたいと思った。人と人とをつなぐこと、それが私に与えられた使命だと気づいた」が持論になる。
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