- 2019.08.27
- 書評
すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。
文:石井妙子 (ノンフィクション作家)
『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)
もともと、昭恵夫人は、加計学園が経営する「御影インターナショナルこども園」の名誉園長を引き受けていた。また、なによりも夫と加計理事長の関係性を長年、間近に見続けてきた。だからこそ、森友学園が新設する小学校の名誉校長になることも問題だと思わず、夫が加計の大学新設に力を貸したように、自分もまた、官庁に働きかけて、夫の思想に沿った教育をする、夫の信奉者である籠池理事長夫妻に心から尽くそうと考えたのだろう。
首相である夫の周りには政権を支える取り巻きがいる。彼ら彼女らに引けを取りたくない、自分も夫を支える存在でありたいと張り合う気持ちも夫人にはあったのだろう。
森友問題を夫人の暴走だと片付けるのではなく、夫人を利用し、夫人にも権力を与えてきた夫や政権の責任を、より重く見るべきではないか。
男たちはゴルフ、カラオケ、酒で交友を結び、互いに利益を与え合う。そこにまた、女たちも悪びれることなく加わった。下村博文元文科省大臣夫人の下村今日子と昭恵夫人の享楽的な遊びぶり。「文科省大臣夫人」「首相夫人」の肩書で、ともに加計学園の広告塔にもなっている。本人たちは夫のため、国家のためとでも思っていたのか。
本書を読み私は、現役総理がかかわったとされるダム建設をめぐる汚職事件をリアルタイムで描いた石川達三のモデル小説『金環蝕』を思い出した。約半世紀前に書かれた作品だ。当時の日本では、ダムや原発といった公共事業に莫大な税金がつぎ込まれており、そこで政治家が口利きをし、見返りに建設会社から賄賂を受け取るといった、わかりやすい悪の図式があった。
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