書評

ブルーナさんからの贈りもの

文: 酒井駒子 (絵本作家)

『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』(森本俊司 著)

『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』(森本俊司 著)

 小さい頃、初めて買ってもらった絵本が、『ちいさなうさこちゃん』でした。外から帰るなり母が待ち構えていて、「はい、〇〇子の」と、手渡してくれました。私はびっくりしました。それまで家の中にある絵本は兄の本だったので、「自分用」に本がもらえるなんて考えたことがなかったのです。

 母もなんだか嬉しそうでした。何か「良い」ものを、この子に与えられる、という表情で誇らしそうでした。そして私に、「おおきな にわの まんなかに……」と読んでくれました。

 読み終わって、母は「どうだった?」と聞いたんだと思います。私はなんと答えたのだったか。たぶん「……わかんない」とでも言ったのでしょう。母の幾分がっかりした表情を憶(おぼ)えています。

 私は、その時うまく言えなかったけど「うさこちゃん」を好ましい、と思いました。言葉にはできないけど気に入って、何度も撫(な)でるように眺めました。

ディック・ブルーナ森本俊司

定価:本体750円+税発売日:2019年07月10日


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