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『キングレオの回想 最後の事件』円居挽――立ち読み

出典 : #別冊文藝春秋
ジャンル : #小説

別冊文藝春秋 電子版26号

文藝春秋・編

別冊文藝春秋 電子版26号

文藝春秋・編

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「別冊文藝春秋 電子版26号」(文藝春秋 編)

「なんでだ?」

 作品としてのキングレオは今のところ日本探偵公社が権利を持っている筈だし、今更獅子丸や大河の協力抜きにどうにかできるものでもないだろう。

「『天空の密室』の件で映画会社とテレビ局がな……」

「ああ、今度の新春映画か」

『名探偵キングレオ 天空の密室』は今度の正月公開予定の映画で、キングレオの劇場版シリーズとしては三作目になる。一作目が特別列車、二作目が豪華客船ときて、今回の舞台はなんと飛行船だという。おまけに今回のクライマックスは墜落する飛行船からの脱出のようで、最早ミステリ映画の枠をはみ出している気もするが、まあエンタメ大作というのはそういうものかもしれない。

 プロモーション計画の中には国内では一つしかない豪華飛行船オートクレール号にマスコミ関係者を乗せて試写会を行うというものもあった。このオートクレール号というのは作中に出てくる飛行船のモデルなので故無きプロモーションでもないのだが、まあ盛大な予算の無駄遣いだと思う。

「ここ一月、獅子丸が表に出てこないお陰でプロモーション計画にかなり影響が出てるのは知ってるな?」

「……ああ。連日大変だよ」

 有が知ってる範囲だと、獅子丸自身による主演キャストやゲストの大物俳優との対談収録、ツーショット撮影などが予定されていた。業界人曰く、ここがプロモーションの肝で、あるとなしとでは映画の初動が全然変わってくるという。

「このままだと目標としている興行収入に届かないかもしれないと脅されたよ」

「今回は興行収入百億を目指すとかブチ上げてたもんな」

「百億は目標額として、三十億を超えないようなら次はもう手を引くと言ってきた」

別冊文藝春秋からうまれた本

電子書籍
別冊文藝春秋 電子版26号
文藝春秋・編

発売日:2019年06月20日

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  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

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