書評

現代なら、ダメンズにつかまるタイプ

文: 小日向えり (タレント・エッセイスト)

『ゆけ、おりょう』(門井慶喜 著)

『ゆけ、おりょう』(門井慶喜 著)

 創業一八六三年(文久三年)、一五六年の歴史を持つ横浜の高級料亭「田中屋」は、かつておりょうが仲居として働いていた場所です。おりょうがいた頃は、「さくらや」という名前だったそう。

 横浜の大学に進学した歴史好きの私にとって、この田中屋は憧れのお店でしたが、敷居も値段も高く、なかなか行くことができませんでした。そしてその存在を知ってから10年後、やっと田中屋を訪れる機会に恵まれたのです。建物に入ると、「ここでおりょうさんが月琴を奏でていたのかな」「幕末の志士、西郷隆盛や伊藤博文が国事を語っていたのかな」と想像が膨らみました。

 田中屋のある神奈川宿は、晴れた日は江戸湾を隔てて、房総半島まで見渡せたという風光明媚な宿場町。湾を見下ろす崖のような高台に建つ田中屋の部屋からは、目の前の海に釣り糸をたらして、魚釣りができたそうです。昔はこの窓からこんな景色が見えたんですよ、と仲居さんに古写真を見せていただきました。

ゆけ、おりょう門井慶喜

定価:本体760円+税発売日:2019年08月06日


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